リモートワークでも、社員の心の健康を維持するために社員研修のプロが語る(2/3 ページ)

» 2020年06月16日 08時00分 公開
[朝倉千恵子ITmedia]

 人事の方々や、上司に当たる方々は、ぜひ新入社員に対して「何か不安なことはありませんか」「気軽に相談してくださいね」と手を差し伸べ、入社後にやってみたいことなどポジティブな話題を提供するように心掛けていただきたいと思います。話を聞いてくれる人がいる、相談できるということを認識するだけでも、新入社員の心は随分と軽くなります。

 脳は現実と空想の区別がつかない、といわれています。ネガティブなことばかりを考えていればいつしかその人の中ではそれが現実となり、反対にポジティブなことばかりを考えていれば、そうなるように行動するようになります。

自分のためのリフレッシュタイムを確保する

 心を健康に保つために、非常に重要なのがリフレッシュの時間を設けることです。私は創業社長という立場がら、これまで非常にたくさんの、大きな悩みを抱えてきました。もちろん中には人に言えないものもあります。それでもここまで心に不調をきたさずにやってきてこられたのは、気分転換の時間を必ず作ってきたからだと思っています。

 私の場合のリフレッシュは、お酒とお風呂です。お風呂は毎日、朝と晩に2回入っています。お酒を飲んで酔っている間、お風呂に入ってリラックスしている間は他のことは忘れられます。その時間があるからこそ一度思考をリセットできているのです。

photo 写真はイメージです

 もちろん、リフレッシュの最適解は人によって変わります。私にとってのリフレッシュはお酒(特に人と飲むのが好き)ですが、人によっては飲み会が苦痛だと感じる人もいます。上司がお酒好きだからと「リフレッシュのためにオンライン飲み会をしよう!」と週末の度に誘われていては、部下にとっては何の気分転換にもなっていないこともあり得ますので注意してくださいね。

 だからこそ、このリフレッシュの選択は社員個人ができるような環境を作ることが、経営者や人事担当者の方には求められていると思います。「有給をとってね」と伝えるだけだと、積極的に休まない社員もいるかもしれません。リフレッシュをしてもらうことが会社にとっても良いことなのだと伝えた上で、気分転換の時間を確保する仕組みづくりが必要です。

一般社員は、リモートワークで心を病むのか?

 ところで、そもそもの疑問として、リモートワークで社員は本当にメンタル不調を起こしているのでしょうか? 私のところに届く「社員のメンタルが心配です」というご相談の多くは、役職のつかない一般社員のことです。

 人の悩みの8割は人間関係だといわれていますし、こと会社では原因のほとんどが上司です。リモートワークで上司との距離ができたことで、一般社員の中には心が軽くなったと思っている人もいるかもしれません。

 厚生労働省が発表した、2020年4月の自殺者数は前年度比で19.8%減。過去5年間で最大の減少幅だったとのことです。新型コロナの影響による経済不況で自殺者が増えるのではないかとも予測されていましたが、真逆の結果となりました。

 学校や会社に行かなくてよくなったことで、これまで心を苦しめてきた人間関係の問題から解放された人が少なからずいる、といえるでしょう。

心を健全に保ちながら、仕事の成果を求める

 単純に心の問題だけを見れば、リモートワークで救われた人も少なからずいる、というのが私の考えです。とはいえ、上司の目がなくなった状態、衆人環視ではない状態で、仕事のモチベーションを維持継続できる人は多くはありません。心が健康なのは何よりですが仕事に身が入らないのでは会社としても困ってしまいますので、手を打たないといけなくなります。

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