大多数の企業が新型コロナウイルスで傷つく中、アップルは巣ごもり需要をとらえ、業績を伸ばしている。20年4〜6月の売上高は前年同期比11%増の596億8500万ドル(6兆4000億円)、純利益は12%増の112億5300万ドル(約1兆2000億円)(リンク)。ロックダウンとオンライン授業の増加で、iPadとMacが好調だったことに加え、中国でのシェア拡大も明るい材料となった。
iPhoneはファーウェイやOPPO、vivo、シャオミなど中国メーカーの台頭もあってこの数年中国市場でシェアを落とし続けていたが、昨年発売した「iPhone 11」が高く評価され、さらには今春リリースされた「iPhone SE(第2世代)」も、そのコスパの良さがコロナ禍で財布のひもが固くなった消費者の心をつかんだ。
アフターコロナを占う商戦として注目された6月のECセールでも、iPhoneは各ECで売れに売れ、調査会社のCanalysによるとiPhoneの4〜6月の中国での出荷台数は同35%増の770万台に達した。iPhone 12の発売が予定より1カ月遅れても、SEが隙間を埋めると見られていた。
もし中国で、iPhoneからWeChatに接続できなくなるリスクが高まれば、iPhone 11とSEで盛り返していた中国市場では再び逆風にさらされる。ファーウェイなど中国メーカーはそこを突いて中国市場でプロモーションを強化し、「ファーウェイの売り上げを伸ばし、アップルを失墜させる」という、トランプ大統領の狙いとは反対の結果がもたらされる可能性もある。
テンセントとバイトダンスとの取引を禁止する大統領令への署名から一週間経っても禁止の詳細が伝わってこないのは、米国企業の成長と中国企業の締め付けを両立させる線引きを、いまだ米政府ができていないからかもしれない。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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