基本的な技術ポイントは3つある。1つ目はすでに触れたフルインナーフレーム。あらためて説明すれば、モノコックの「骨格と外皮」を完全に分離させたところに真価がある。強度部材であるモノコックは、従来センターセクションとそれ以外に分けて、アウタースキンとの溶接を済ませてから構造部材の溶接が行われていた。美麗に仕立てなければならない外皮が邪魔してセンターセクションとそれ以外を溶接するポイントが制限されていたのである。フルインナーフレームでは、まずクルマ全体の構造骨格を理想的溶接ポイントで溶接してから、飾り付けのアウターパネルを溶接する手順に組み替えたのだ。これによって、圧倒的にボディ剛性を引き上げることができた。
これまでのSGPの部分とフルインナーフレームとを色分けして分かりやすく、のつもりが、ただ構造材を追加しただけみたいに見えてわかりにくくなってしまった例(失礼)。どちらかといえば材の追加より溶接点の方が大事なはず。多分新旧シャシーを並べないと分かりにくい
2つ目は、2ピニオン式のパワステユニットだ。ラックに対して、ステアリングからドライバーが入力するピニオンギヤと、モーターがアシストするために使うギヤを分けた。従来のステアリングシャフトや1つのピニオンギヤにモーターが取り付けられている形式では、モーターとステアリングが直結されているに等しいので、ギヤのバックラッシュ分の余分なモーターの駆動レスポンスが、ステアリングに雑味として戻ってしまう。2ピニオンであれば、アシスト側ピニオンの動きは一度ラックギヤに伝えられてから間接的にステアリング側ピニオンに戻るので、実際にラックギヤが動いた分だけがフィードバックされる。つまりパワステユニット全体で操作に対する遅れや、無駄なフィードバックが発生しにくい。
ドライバーからの入力と、モーターによるサポートの入力経路であるピニオンギヤを分離した2ピニオン式パワステユニット
3つ目は、電制可変ダンパーで、これはソレノイド制御によるオイル通路を外筒と内筒の間に設けて、特に動的領域での姿勢制御に用いている。
電制ダンパーは、ソレノイドバルブ式。応答性の高さに目をつけて、瞬間的な姿勢制御にも用いられている
- 好決算のスバルがクリアすべき課題
今回はスバルの決算が良すぎて、分析したくてもこれ以上書くことが無い。本文で触れた様に、研究開発費は本当にこれでいいのか? そして価格低減の努力は徹底して行っているのか? その2点だけが気になる。
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スバルは東京モーターショーで新型レヴォーグを出品した。レヴォーグはそもそも日本国内マーケットを象徴するクルマである。スバルは、日本の自動車史を代表するザ・ワゴンとして、レヴォーグはGTワゴンという形を死守する覚悟に見える。
- 変革への第一歩を踏み出したスバル
新広報戦略の中で、スバルは何を説明したのか? まず核心的なポイントを述べよう。今回の発表の中でスバルが「次の時代のスバルらしさ」と定義したのは、従来通りの「安心と愉しさ」で、その意味において従来の主張とブレはない。従来と違うのは、その「安心と愉しさ」とは何なのかについて、総花的にあれもこれもありますではなく、もっと具体的言及があったことだ。
- スバルよ変われ
スバルが相次いで不祥事を引き起こす原因は一体何なのか? スバルのためにも、スバルの何が問題なのかきちんと書くべきだろうと思う。
- スバルが生まれ変わるために その1
筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせた販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルは、本気でそう思っている。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。北米ビジネスの成功について、何の戦略があり、何をしようとしているのか、それを知りたいのだ。
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