素谷: 店が繁盛したことはものすごくうれしかったのですが、その一方で課題が出てきました。カレーをつくらなければいけないのに、つくれない事態に陥りました。100時間かけてつくるということは、そのぶんスペースが必要になる。カレーが入った寸胴鍋を置かなければいけないのですが、それを置くところがなくなってきました。
土肥: 客数が増えれば増えるほど、寸胴鍋の数も必要になってきますからね。
素谷: オープン当初は「定休日なし」だったのですが、それだと店を回すことができなくなって、半日休んでカレーをつくることに。それでも回らなくなりまして、週に1日休むことに。カレーをつくる日を決めないと、店を運営することができなくなりました。「このままではいけない」ということで、2号店は広いスペースのところにしました。
2号店は5店舗分のカレーをつくることができる。というわけで、2号店でつくったカレーを、他の店に配達するといった形で運営していました。とはいえ、そのころはまだ「軌道にのった」とは言えずでして、家賃の安いところを借りて運営していました。また、開業資金も潤沢ではなかったので、壁にクロスを貼ったり、木を切って棚をつくったり、自分たちでできることはなんでもやっていました。
土肥: DIYが得意でなければ、なかなかできることではないですよね。潮目が変わったのはいつごろでしょうか?
素谷: 2014年と16年に、カレーの祭典「神田グランプリ」で優勝しまして、商業施設さんからお声がかかるようになりました。「ウチの施設内で出店しませんか?」と。その一方で、ある人から「ショッピングセンターのフードコートでカレー店を繁盛させるのは難しいよ」といった声もいただきました。
ちょっと調べたところ、確かにカレー店でうまくいっているところは少ない。ただ、個人的に自信がありました。「ウチはやっていける」と。どういうことか。ショッピングセンターで食事をすることは、非日常的なこと。家で食べるようなカレーは食べたくないのではないか。100時間カレーは欧風カレーなので、ルーの色は黒い。また、カレーのソースポットを使っているので、“家では食べられないカレー”と感じてもらえるのではないか。
この予想は、当たりました。出店したフードコートのことを調べたところ、以前そのスペースで某カレーチェーンが店を構えていまして。売り上げを比べると、その店の2倍を超えることができました。別のフードコートでも出店したところ、そのスペースでも以前、某カレーチェーンが店を構えていました。売り上げを比べたところ、その店の3倍売れました。
こうした結果を受けて、「フードコートは当社にとって、ブルーオーシャン(競争相手がいない市場)ではないか」と考えました。「店舗数をどんどん増やしていけば、うまくいくのではないか」という方針で動いていたら、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くのショッピングセンターは閉店する事態に。当然、当店の売り上げもガクンと落ちてしまいました。
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