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老舗の製薬会社が頼った、月10万円で雇える“オンライン副業人材”ネット通販売上が130%増(2/2 ページ)

» 2020年09月03日 08時00分 公開
[猪尾愛隆ITmedia]
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 違いの1つ目はコストだ。日野製薬はオンライン副業人材に対して時間給5000円、30時間の稼働で毎月15万円程度の報酬を支払っている。しかし、この時間給単価はこの人材が社員として勤める会社からの給料を勤務時間で割った単価よりは安い。

 法人(組織)としてのサービスとなると、オフィス賃料や新人育成などさまざまな間接費が発生するため、人を1人雇うときにかかる費用は人材が受け取る給料の2〜5倍程度の価格となるのが一般的だ。一方、オンライン副業人材の場合、そういった間接費が圧倒的に少ない。さらにリモートとなれば移動時間や交通費が必要ないので、企業にとっては圧倒的にコストが安くなる。

 もう1つの違いは、1カ月以内で終わるような小さな業務でも依頼できることだ。法人の場合、オフィスや社員の人件費といった固定費が発生している。加えて、アポイントからサービス説明、見積もり、交渉、契約といった受注までの営業経費を考えた上での損益分岐点を考慮した、最低契約期間や最低受注金額などの設定がある。赤字案件となるのが分かりきっている小さな業務を引き受けるのは法人にとってリスクでしかない。

 一方、オンライン副業人材には抱える固定費がない。これまで報酬を生んでいなかった月30時間程度の業務で受け取る副業による報酬は純増。本業での報酬があるため、短期で契約が終了したとしても困ることはほとんどない。

photo 写真はイメージです

オンライン副業とデジタル化業務は相性がいい

 実際に、福岡の社員約30人の金融・経営支援を行う会社は、「Excelの請求書データファイルを請求書発行システムに自動で読み込むためのCSVファイル作成業務」をオンライン副業人材に依頼。長野の社員約60人のリゾート運営会社は、「社内メールシステムをクラウドメールに切り替える業務」をオンライン副業人材に依頼している。それぞれ、大手IT企業グループに勤める人材が1カ月程度で業務を遂行した。このような業務は、業務量が少ない割には手離れが悪く手間がかかるため積極的に受けたがる企業は少ない。

 これまでは、こうした小さな改善業務を整理し、業務の範囲や優先順位などをまとめ、「基幹システムのリニューアル」といった大きな塊として切り出す作業を行わないと外注するのは難しかった。しかし、切り出す作業自体になかなか時間を割けず、外注も社内対応もできず、不満を抱えながらずるずると既存のツールを使い続けてしまう。オンライン副業人材を活用し、こうした状況から抜け出す中小企業がこれから増えると筆者は考えている。

 ネット通販やクラウドツールの導入といったデジタル化業務は、ネット環境下でのPC作業が中心なので、リモートワークで対応しやすく、成果につながりやすい。

 政府による副業解禁、デジタル技術の進化、そして新型コロナウイルス感染拡大によるリモートワークの普及によって、急きょ出現したオンライン副業人材の活用。デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の成否を分けるようになった昨今、中小企業にとっては大きなチャンスといえるだろう。

著者紹介:猪尾愛隆

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 JOINS株式会社 代表取締役。1977年、東京都生まれ。2002年慶應義塾大学大学院修士課程修了。博報堂に入社し、法人営業を3年間経験。2005年、ミュージックセキュリティーズ入社。投資型クラウドファンディングのプラットフォーム事業を立ち上げた。2017年6月に退職し、大都市の副業人材と地域中小企業をつなぐ人材シェアリングサービスを提供する「JOINS」を創業。


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