日本進出はいつ? 緊急時に命を救う「AI診断」 次世代ユニコーン「コルティ」の挑戦生死を分ける(4/6 ページ)

» 2020年09月04日 07時34分 公開
[小林香織ITmedia]

エンジニアリングに長けた55人のスタートアップ

 コルティはコペンハーゲンに本社、リトアニアの首都ヴィリニュスに開発専門部隊を置く。所属する55人のメンバーのうち、ほとんどがエンジニアとしてのバックグラウンドを持つ、数あるIT企業の中でもテクノロジーに強い集団だ。エンジニアチームを率いるCTOは、アップルで機械学習プロジェクトに携わっていたLars Maaløe(ラーズ・マーロー)氏が務める。

 「私たちは、エンジニアリングを第一に考えた問題解決のアプローチを重要視しています。そのうえで、ヘルスケア業界にインパクトを与えたいという情熱と高いスキルも求められます。

メンバーのほとんどはエンジニアとしてのバックグラウンドを持つ

 当社のサービスはすでに世の中にあるものではないため、最先端の技術を使い、膨大な数の仮定を立て、一から解決策を構築する必要がある。それは、言葉では表せないほど大変な作業です」(クリーブ氏)

 実は、コルティには1人の日本人データサイエンティストが所属している。東京理科大学を卒業後、英国のエディンバラ大学院でMSc Acoustics&Music Technology修士号を取得、デンマークで現地就職した乾祥碩(いぬい・あきひろ)さんだ。現地の大手企業でR&Dエンジニアとして勤務した後、約1年前に、より刺激的な環境を求めてコルティに転職したという。

 「現在は、デンマークやスウェーデンの救急コールセンターで利用されているデータ収集システムと、トリアージに用いられる質問フローの最適化アルゴリズム開発を担当しています。現状、当社のAIは音声を分析して治療方針を推奨するまでが限界ですが、将来的にはAIがディスパッチャーより早く、より適切な質問を提案するところまでを目指しています」(乾氏)

データサイエンティストを担う乾氏

 この仕事における難しさややりがいを尋ねてみると、「頭を悩ませるような課題に解決策を見出すたびに、データサイエンティストとして成長できている実感がある」と乾さん。

 「ヘルスケア領域のIT化は人命にダイレクトに関わるため、すべての情報を慎重に扱う必要があります。僕ら開発チームが直接、医療従事者とコンタクトを取ることも多く、説明責任能力が問われることも。見本とする開発例がないプロジェクトに携わる際は、その難解さに翻弄(ほんろう)されることもありますが、僕らが開発したシステムやアルゴリズムが社会に与える影響の大きさがモチベーションとなっています」(乾氏)

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