この連載を読んでいる人は先刻ご存知の話だとは思うが、念のため解説しておこう。電動車というのは、大分類で「哺乳類」みたいな全体集合を指す。駆動用のモーターが搭載されていれば、それがメインだろうが補助だろうが全部電動車だ。スズキのSエネチャージ(マイルドハイブリッド)からトヨタのTHS2(ハイブリッド)、あるいはテスラ(電気自動車)まで、全部電動車である。
対して、用語としての電気自動車が意味するのは、バッテリーに外部から充電して、その電力をエネルギーにモーターの駆動で走るクルマのことで、これは哺乳類に対する「人類」みたいな小分類。電動化、もしくは電動車両という全体集合の一部に電気自動車という部分集合がある。
ロイターは哺乳類の話を人類の話として書いてしまったわけだ。問題なのは「哺乳類の大幅増加」という話ならば普通のニュースなのに「人類の大幅増加」だと、そこに特定の意味が発生し、食料問題や環境問題の争点にされる。EVも裏返しながら同じ傾向にあるので、こういう誤報は罪深い。
英語では電動車は“Electrified vehicle”、電気自動車は“Electric vehicle”だ。数年前これを誤訳した日経新聞が、「ボルボが全生産車両をEVに」という大誤報をやらかして以来、大手メディアは反省もなくこの手の誤報を何度もまき散らして世の中をミスリードし続けている。
Honda eも予約中止。背景にはバッテリー供給の問題があると見られる
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- RAV4 PHV 現時点の最適解なれど
トヨタはRAV4 PHVを次世代システムとして市場投入した。世間のうわさは知らないが、これは早目対応の部類だと思う。理由は簡単。500万円のクルマはそうたくさん売れないからだ。売れ行きの主流がHVからPHVへ移行するには、PHVが250万円程度で売れるようにならなくては無理だ。たった18.1kWhのリチウムイオンバッテリーでも、こんな価格になってしまうのだ。まあそこにはトヨタ一流の見切りもあってのことだが。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- ようやくHVの再評価を決めた中国
中国での環境規制に見直しが入る。EV/FCVへの転換をやれる限り実行してみた結果として、見込みが甘かったことが分かった。そこでもう一度CO2を効率的に削減できる方法を見直した結果、当面のブリッジとしてHVを再評価する動きになった。今後10年はHVが主流の時代が続くだろう。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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