さて、ここまでは時事ネタをベースにした話。原稿の構成的には枕の部分だ。ここから本筋に話が進む。それはバッテリーの生産に関する現状の話である。
バッテリーのサプライ状況は、電気自動車(EV)の未来を決める。EVだけではない。すべての電動化車両に影響を与えるのだ。すでにトヨタはバッテリー生産量第1位のCATL社、第2位のパナソニック、第3位のBYDとパートナーシップを結んでおり、グローバルトップ3全社と提携しても供給に問題が起きている。その現状をリアリズムを持って受け止めるべきだろう。
さて、そこそこ重要な余談だが、9月29日にロイターが大誤報を放ち、それを朝日新聞デジタルが検証もせずに再配信していたが、この人たちは何度言っても電気自動車と電動車の違いが分からないようだ。
「トヨタは従来の計画を5年早め、2025年に電気自動車の世界販売550万台を達成する」というのが誤報の内容だが、トヨタが言っているのは電動車を550万台という話で、EVなどとは一言も言っていない。12年間実績を積み上げてきたテスラの2019年の販売実績は36万7000台である。2020年現在、事実上EVをラインアップに持たないトヨタが、あと5年で自社の年間生産台数の過半にも及ぶ550万台のEVを生産・販売できるかどうかは、常識さえ持ち合わせていれば容易に想像できる。それが分からない人間が記事を書いているというところにもはや恐ろしさを感じる。
RAV4 PHVのシステム
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- RAV4 PHV 現時点の最適解なれど
トヨタはRAV4 PHVを次世代システムとして市場投入した。世間のうわさは知らないが、これは早目対応の部類だと思う。理由は簡単。500万円のクルマはそうたくさん売れないからだ。売れ行きの主流がHVからPHVへ移行するには、PHVが250万円程度で売れるようにならなくては無理だ。たった18.1kWhのリチウムイオンバッテリーでも、こんな価格になってしまうのだ。まあそこにはトヨタ一流の見切りもあってのことだが。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- ようやくHVの再評価を決めた中国
中国での環境規制に見直しが入る。EV/FCVへの転換をやれる限り実行してみた結果として、見込みが甘かったことが分かった。そこでもう一度CO2を効率的に削減できる方法を見直した結果、当面のブリッジとしてHVを再評価する動きになった。今後10年はHVが主流の時代が続くだろう。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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