クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

RAV4 PHVとHonda e予約打ち切り どうなるバッテリー供給池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/7 ページ)

» 2020年10月05日 07時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 バッテリー需給がひっぱくしている現状では、プレミアムEVの代わりにハイブリッドなら80台作れる。仮にハイブリッドの温室効果ガス低減効果を30%と低めに見積もったとしても2400%となり、それはEV24台分の低減効果になる。ヤリスのハイブリッドあたりを基準にしたら多分50%とかになるのではないか。

 つまりバッテリーがボトルネックとなっている現状では、環境を少しでも改善したいとすればバッテリー搭載量に対する温室効果ガス削減効果の比率で見るのが最も合理的だ。そういう意味ではやはり環境への貢献はハイブリッドが最も高い。200万円以下の選択肢もあるし、300万円以下でなら選り取り見取りだ。EVやプラグインハイブリッドと比べ、イニシャルコストが安く普及しやすい割に効果が高い。

 プラグインハイブリッドはまだ価格的にこなれておらず、EVよりいくぶん安いくらいの価格なので、現状、効果との見合いではEVの勝ちといえるかもしれない。ただし、バッテリーの搭載量では大差があるし、価格面でも今後のポテンシャルの高さはかなり期待できる。

 とにかく環境対策にはEVだけが唯一解だと考えると判断を間違う。何も例外なく1つのシステムに収れんしなくてはいけない理由はない。朝食がパンでもご飯でも好きな方を選べることに異議を申し立て、どちらかに統一せよと言い出したら変に思うだろう。それと同じく、使う地域や使い方や経済力によって、いろいろなシステムにはそれぞれ長所短所や使い勝手の好みがある。

 長期で見れば、バッテリー供給が変われば、多くの人の選択肢は自然と変わっていくだろうし、その先はオールEVの社会なのだろうが、目の前にあるバッテリー供給問題に目をふさいで「EVが正義」と声高に叫んでも何も変わらない。いま可能なことにベストを尽くして、温室効果ガスの削減を推し進めることの方がずっと大事なのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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