クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

RAV4 PHVとHonda e予約打ち切り どうなるバッテリー供給池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/7 ページ)

» 2020年10月05日 07時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

増産が進まない理由

 バッテリー生産は設備投資が巨額になる。しかも工場への設備投資というのは、回収には20年も30年もかかるのが普通だ。そういうリクープに時間がかかる投資を決めるには、前述の通り、技術トレンドが運悪く端境期だということが問題をより難しくしている。

 バッテリーに爆発や炎上のリスクがあるのは広く知られているが、その原因の多くは異物の混入だ。バッテリーをコンパクト化するためには、正電極と負電極のクリアランスの極小化が求められる。そこにわずかな異物が入ってもショートサーキットが起きて、炎上のリスクが高まる。だからバッテリーの生産工場は高レベルのクリーンルームが求められる。のみならず、化学製品なので、温度と湿度のコントロールも厳密にしなくてはならない。工程数が多いため長大なライン全体の条件を厳密に整えるためには高い気密性と緻密なエアコンディショナーが必要だ。それがコストを押し上げるのだ。

 そんな大艦巨砲主義的工場を作った挙句、トヨタが突然「懸案の全固体電池が完成しました」とでも発表しようものなら、設備投資が全部パーになりかねない。もちろん運良く全固体電池の生産に求められる設備がリチウムイオンと似通っているならば良いが、現状では誰もそれを明言できる状態にない。なぜならば全固体電池の生産が始まらないのは、求められる要件を満たす生産方法、あるいは生産技術が確立していないからだ。それがどういう内容になるのはまだよく分かっていないのだ。

 ギャンブラーのテスラは大規模なバッテリー工場建設に乗り出しているそうだが、当然これも高リスク。それにつきあうパナソニックも同様のリスクを負う。

米テスラとパナソニックが、米ネバダ州で14年に着工させたリチウムイオンバッテリー工場のギガファクトリー。30%が完成、稼働しており、同社は世界で最も大きなバッテリー工場だとしている(完成予想画像 同社Webページより)

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