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テレワーク下でこそ威力、「顧客と会わない営業」の極意とは?「コンタクトレス・アプローチ」に迫る(4/4 ページ)

» 2020年10月11日 10時00分 公開
[長尾一洋ITmedia]
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アマゾンエフェクトの衝撃

 「アマゾンで買い物をする」という消費スタイルが、消費者に向けて物品を売り込むというリアルな商談の価値を下げてしまったのです。何しろ、アマゾンをはじめとする通販の世界では販売促進のためのリアルな営業は不要で、消費者からすると、認知度やブランドイメージがものを言います。ブランド力の高い商品や口コミで人気の高い商品は、ほうっておいてもどんどん売れていきます。もし扱っている商品やサービスが「名前だけで売れる」くらい人気の高いものであれば、営業活動の必要はありません。

 BtoB(企業間)の取引であっても、それは同じです。名指しされるような、価値が広く認められている商品を販売していれば、特に営業活動をする必要はありません。発注と受注だけのシンプルな仕組み、いわばBtoC(企業と一般消費者間)における通信販売のようなスタイルに切り替えるのが賢明です。

 とはいえ、実際にはほとんどの企業が「名前だけでは売れない」商品を取り扱っています。営業活動がないと、その魅力が伝えられない。目にも留めてもらえない。通販だけではとても売れそうにありません。

 そもそも営業とは、「自分の持っている価値を相手に伝え、お金をもらえるほどのレベルでその価値を認めてもらうこと」です。ですから、相手の言いなりになって、値下げ交渉を持ちかけられて右往左往するような営業なら必要ありません。それならむしろ通販でいいのです。顧客が何を買うかをすでに決めていて、もっとも有利に購入できればそれでいいと考えているなら、営業担当者など通さずに通販で買った方が安上がりだからです。

 つまり、営業の存在価値は「顧客の考えを否定するか、あるいは超越した提案ができるかどうか」にかかっています。別の言い方をすれば、顧客とともに目標をつくり出して、新しいニーズを生み出せるかどうか、ということになります。通販ではできないことをしなければ、存在価値はないのです。

 例えば、その目標と現状の間にギャップがあり、かつそのギャップを埋める方法を顧客が認識している場合は、営業の出る幕はありません。通販で買えば事足りますし、あるいは他社との「あいみつ(相見積もり)」を取られて値切られてしまいます。

 そうではなくて、「いやいや、別の方法がありますよ(=顧客の考えを否定する)」「この方がもっと可能性が広がりますよ(=顧客の考えを超越する)」といった働きかけができるのが、本来の営業というものです。そういう営業担当者にならなければなりません。

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