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» 2020年11月20日 07時00分 公開

Q&Aと解説:「在宅勤務だから副業したい」に人事はどう対応すべき? 注意すべきポイントとは (1/3)

新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務や労働時間の短縮を実施する企業は少なくない。時間にゆとりができる一方で、残業代が少なくなった社員から副業や兼業を望む声が出た場合、人事はどのように対応すべきだろうか。副業を認めるか否かの判断基準や、副業を認めた場合の運用について解説する。

[BUSINESS LAWYERS]

本記事は、BUSINESS LAWYERS「新型コロナで在宅勤務を行う社員から副業の許可を求められた際の実務対応」(樋口陽亮弁護士/2020年11月10日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

 Q 当社は、新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点から、社員に対して在宅勤務を命じています。そうしたところ、先日社員から副業をしたいとの申し出がありました。副業を認めるか否かの判断や、副業を認めた場合の運用について注意すべきポイントはありますか。

 A 副業の内容を個別具体的に検討して、副業を認めないことが過度な制約とならないよう注意する必要があります。副業を認める場合には、労働者からの申告等により副業・兼業の内容や労働時間を把握することにより、長時間労働による健康被害や労働時間規制等の問題が生じないように配慮をすべきです。

解説

 本記事の執筆時点において、新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点から、休業もしくは在宅での勤務、あるいは労働時間短縮などの措置を講じている企業が多くあります。そういった企業で働く社員にとっては、時間にゆとりができる一方で、残業代がでないこと等による収入の減少が生じています。そのため、社員からは副業・兼業を望む声が多くあがっているのが現状です。

 実は副業・兼業に関する取り組みは、働き方改革の一環として、新型コロナウイルスの感染拡大の前から政府が主導してその普及促進を図られていたところでした。本記事では、令和2年9月に改定された厚生労働省による副業・兼業に関するガイドラインの内容も踏まえながら、副業・兼業におけるポイントを解説していきたいと思います。

1.副業・兼業を認めるか否か

 社員の副業・兼業を認めるか否かについて、まずは社内ルール(就業規則・雇用契約書)を確認する必要があります。

 副業・兼業に関する方針は企業によってさまざまであり、禁止としている企業もあれば、届け出制や許可制をとっている企業もあります。ここで注意が必要なのは、労働者が労働時間以外のプライベートな時間をどのように利用するかは基本的には自由ということです(京都地裁平成24年7月13日・労判1058号21頁など)。そのため、企業が社内ルールとして副業・兼業を一律禁止としていても、実はそのような規制が無効であることもあります。

 従って、企業としては、社員の求める副業・兼業の内容を個別具体的に検討して許可をするか否かを判断する必要があります。この点について、厚生労働省の定める「副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定・令和2年9月改定)」(以下、「ガイドライン」といいます)では、制限が許される例として以下のケースをあげています。

(1)労務提供上の支障がある場合

(2)業務上の秘密が漏えいする場合

(3)競業により自社の利益が害される場合

(4)自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

2.労働時間規制・割増賃金との関係で注意すべきポイント

 副業・兼業を行う場合、労働者の全体としての労働時間が長時間となる恐れがあります。この点、労働基準法38条1項では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されており、特に労働時間規制や割増賃金の支払義務との関係で注意が必要です(※1)。

 ここでは本業先と兼業先のどちらの労働が時間外になるのか、どちらが割増賃金を支払うのかという点が問題になります。当該問題について、ガイドラインでは、以下のような解釈が示されています。

(※1)ただし、労働基準法が適用されない場合(フリーランス等)や労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(管理監督者(労働基準法41条2号)にあたる場合等)には、労働時間の通算の規制からは除外されます。

労働時間の通算

  • 副業・兼業の開始前に、自社の所定労働時間と他社の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した会社の時間外労働となる。
  • 副業・兼業の開始後に、所定労働時間の通算に加えて、自社の所定外労働時間と他社の所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となる。

 例えば、前者のケースでは、甲事業所で「所定労働時間8時間」という労働契約を締結している労働者が、新たに乙事業所と同一労働日に「所定労働時間4時間」という契約をして、それぞれの労働契約の通りに労働した場合などが考えられます。

 この場合、先に契約した甲事業所での1日の労働時間は8時間であり法定労働時間内であるため、甲事業所に割増賃金の支払義務はありません。他方、後に契約した乙事業所は、36協定を締結・届け出をしなければ当該労働者を労働させることはできず、また、乙事業所での労働は法定時間外労働となるため、4時間分の割増賃金を支払うことになります。

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 このほか、ガイドラインQ&Aでは、後者のケースを含めいくつかの具体例が掲載されています。

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