クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

SKYACTIV-Xアップデートの2つの意味池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年11月16日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

進化過程にあるSKYACTIV-X

 夢のエンジン技術であった予混合圧縮着火(HCCI)を火種コントロールの(SPCCI、関連記事)によって実現したSKYACTIV-Xは、そもそも燃焼理論から別物の新発明エンジンだ。

 それが普通に回って、ちゃんと不具合なく実用的であるだけでもすごいというのが技術サイドから見た姿なのだが、普通のユーザーにとっては新発明かどうかはどうでもいい。今市場に並んでいるさまざまなエンジンと比べて、ちゃんとバリュー・フォー・マネーなのかどうかが大事なのだ。

 という意味では、既存エンジンに比べてすごく力があるとか、とんでもなく燃費が良いとか、値段が安いとかの分かりやすいメリットが欲しい。しかし、残念ながらSKYACTIV-Xは、燃費とパワーのバランスがまあまあ良く、価格は高い。ということでメリットが曖昧だ。

 これが欧州のように、国ぐるみでCO2削減を頑張っていこうという明確なコンセプトがあって優遇されるのならいいのだが、日本ではそれがない。日本にはハイブリッドという燃費のスペシャリストみたいなユニットを搭載したクルマが、他国に突出して普及しており、圧倒的な燃費をたたき出しているので、それと比べてさらなる優遇はしにくい。しかもトヨタの新世代ハイブリッドに至ってはトルクデリバリーも驚異的に改善して、加減速フィールまで大幅に改善されている。これと戦わなくてはならないという意味では、ハイブリッドに出遅れた欧州より状況が厳しいのだ。

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