八潮地区がこの「都市型ワーケーション」にふさわしい理由について、品川区議会議員を務める阿部祐美子氏はこう説明する。
「八潮は戦後埋め立てられてできた埋め立て地です。全て都市計画の中でできた街なので、『八潮パークタウン』は歩道だけで移動ができますし、公園など緑地部分も十分整備されています。野鳥も数多く、アオサギもよく見かけます」
品川区という都心にありながら自然そのままの環境が整っているのが、八潮地区の特徴だ。いうなれば隣のお台場が人の手で整備され完成されている街だとしたら、八潮は自然を残した土地ともいえる。野鳥以外の自然生物も多い。まさに、都市型ワーケーションにうってつけだ。
都心に位置することで、経営者側の安心感にもつながるという。店舗のデジタルマーケティング支援などを手掛けるPathee(東京都品川)のSales&Marketingグループ リーダーで、品川区でITベンチャービジネスを支援する企業団体「五反田バレー」の代表理事を務める、中村ガクト氏がこう解説する。
「コロナ禍によって、労働者側に働き方の裁量が自由に委ねられている状況もあり、経営者にとっては『こんな働き方をしてしまって大丈夫なのか』と不安になるケースも出てきています。『ワーケーション』と称して休日や有給取得中なのに仕事をしてしまうのは最たる例です。ところが職場からも遠くなく、平日にワーケーションをしてもらう『都市型ワーケーション』は、経営者目線にとっても安心につながるものだと考えます」
残念ながら、今現在、八潮地区にはコワーキングスペースやカフェスペースや、勉強会などを行うことができるコミュニティースペースなど、仕事をするのにふさわしい施設や設備はない。都市部でワーケーションを有効な形で実現できる、十分な環境が整っているだけにもったいない。
「八潮地区は新たな都市型ワークスタイルとライフスタイルを実現できる可能性を秘めたエリア。行政(品川区、東京都など)にもその可能性に気づいてもらい、環境整備を進めて欲しい」(中村氏)
沢渡氏は語る。
「新たな働き方や生き方をカルチャーとして浸透させるためには、ネーミング(名前をつけること)も重要。従来の『八潮団地』『八潮パークタウン』ではなく、例えば『やしパ』のような気軽に呼びやすい名前で、その地域や新たなワークスタイルそのものを表現していく必要もある。
『今日は、やしパしてきます』のように、品川区内や近隣の企業の働き方の選択肢の1つとして、カジュアルにワーケーションできるようになれば、都市部で暮らす人たちも企業もより豊かになるのではないか」
ベンチャー企業を中心に、コロナ禍をきっかけに社内の体制を完全にリモート化してしまった企業も珍しくなく、これにより都心のテナントから企業が撤退するケースも相次いでいる。一方で、家庭や環境の問題などで自宅では作業がしづらいという人も少なくない。そのためのサードプレース(事業所と自宅以外の、第三の働く場所)を確保する意味でも、「都市型ワーケーション」は一石を投じる考え方になりそうだ。
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