ただ、そういう分かりやすい話に流れてしまうと、「賃金」という生産性における本当に大事なポイントから、国民の目がそらされてしまう。それが心配だと筆者は申し上げたいのだ。
実は生産性の問題の本質は、ちまたで騒がれているよりもっと単純で、海外の人が驚くほどの低賃金・重労働を強いられてきた日本の労働者の待遇をよくするだけで、かなり改善される。
個人商店でバイトをするよりも、それなりに大きい会社の正社員になったほうが、給料や福利厚生など待遇が上がるのは説明の必要がないだろう。だから、個人商店などみんな潰れてしまえという話ではなく、個人商店は同じような小規模事業者で集まって大きな企業になれば、そこで働く労働者の待遇は上がる。
これまでのように「ウチは零細なんでボーナスは我慢してくれ」なんて情に訴えられ、低賃金で働かされることがなくなる。つまり、小さな会社が集まって、大きな会社になることは、中小企業労働者が失業することではなく、彼らの賃金をあげることになる。それがひいては、中小企業の生産性向上につながるのだ。
それこそが「中小企業再編」を主張している人たちの真意なのだが、なぜか「小さな会社が淘汰されれば、強い会社だけが生き残るので生産性もガツンと上がる!」という新自由主義的な主張にすり替えられている。
本来ならば「赤旗」や「朝日新聞」という労働者に寄り添うメディアは、「中小企業再編」を応援しなくてはいけないはずなのに、日本商工会議所と一緒になって「弱者切り捨てか!」と叩いている。そのような意味で、日本は左翼リベラル勢力が、経営者の利益を守るという極めて珍しい「ねじれ現象」が起きているのだ。
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