そういう中小企業の生産性をめぐるカオスな状況を、「中小企業の生産性が低いのは大企業が搾取している」という主張はさらに悪化させてしまう。
最悪の場合、大企業が中小企業に仕事を委託させにくくさせ、下請け仕事でどうにか存続しているような中小企業を倒産に追い込む、という皮肉な結果を招く恐れもあるのだ。
1964年に中小企業基本法ができてから、日本ではずっと「中小企業の数を増やす」という政策を続けてきた。そのため買収や合併で絶対数が減ることに極度のアレルギーがあることはよく分かる。しかし、もはやそうも言ってられないくらい、中小企業の生産性は低くなっている。あいつが悪い、こいつが悪いといった形で他人に責任をなすりつけているだけでは残念ながらいつまで経っても、中小企業の生産性は上がらない。
生産性改革の本丸である「賃金」に手を突っ込まないことには、「国破れて中小企業あり」なんて恐ろしい未来が現実になってしまうのではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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