「2月に緊急対策本部が開設されましたが、急ぎオンライン面接の導入を進めました。金融機関ですのでセキュリティには最大限の注意をしており、ツール導入一つにしても本来は簡単ではありません。しかしこのときは導入の承認もかなりスピーディーに認められました」(安田さん)
直接対面ができなくなったとはいえ、選考中の学生とはインターンシップや早期選考などで顔を合わせている。人となりは把握できていたので、最終の判断はオンラインでも可能だと考えたという。
また、22年卒採用に関してもオンライン化を進めている。6月にYouTubeの限定チャンネルを開設。オンライン開催の就職イベントにも参加している。
オンラインインターンシップは6月末から実施。8月には少人数の3daysインターンシップも開催した。
とはいえ、オンラインでのイベントに学生を集めるノウハウがないなか、やりかたは手探りで、順次改善をしていった。会社説明会にしても、ただ説明資料を読み上げる説明会では参加者の理解度も満足度も低くなる。表示するスライドも、クイズ形式を取入れたりツールの機能で挙手やコメントを投稿してもらうなど参加の実感が得られるよう工夫も重ねた。盛り上げ上手な社員のやり方を共有したり、他部署に感想を求めて改善を続けている。
「座談会は特に好評でした。質問がなくなるまで時間を超えても何でも答えるとしたこともあり45分の予定時間を1時間延長した回もありました」(安田さん)
今後の採用に関しては、エントリー数自体は増えていることもあって、「集める」から「つなげる」ことを意識していくという。
また、「インターンシップにおいてはオンラインでも対面でも同じ基準で実施しています。オンラインだからこそのメリットもありますが、それはプラスアルファとして考えています」と安田さんがいうように、オンラインだからといってブレるわけではなく、基本を固めたうえで、手段としてオンラインを活用しているのである。
以上、人材開発部のコロナ対応を概観した。オンライン面接の導入をはじめ、かなりのスピード感をもってオンライン体制への移行が進められたことが分かる。
安田さんも「社内全体でみても、人材開発部はリモートへの対応は早かったはずです」という。新人研修は止めることも無理に集まることもできない。リモートで実施するしかないなか手探りでノウハウを構築していった。いまでは、ツールの操作や研修や説明会の実施・運営に関してマニュアル作成も進み、自信をもって実施できるようになっているという。
岸田さんは今後の課題について「スピーディーに変化に対応するためにも、やり方は現場に任せるのが一番だと思います。今後コロナに関しては希望的な報道もありますが、どうなっていくのか分かりません。ですから複数の対応プランを準備しておき、柔軟に実施していく。先を見据えて、実行に移せる体制を作っていくことが大事だと感じています。状況の変化をいかにプラスに変えられるか、よい機会にもなると思っています」と話す。また、山崎さんは、「今までに誰も経験したことがない状況のなか、特に若手が新しい対応について積極的に取り組み、成長する機会にしていきたい」と話してくれた。
コロナ禍以前から続く、主体性をもった人材が働きやすい環境作りは、変化への対応力として着実に組織の力に結びついているようだ。
(9月17日 オンライン取材)
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