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» 2021年01月18日 07時30分 公開

いまさら聞けない、ジョブ型雇用の基礎知識 日本企業が真剣に向き合うべき論点新連載(2/3 ページ)

[柴田彰,ITmedia]

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の比較

 近年、ジョブ型の対立概念として定着してきた、日本的なメンバーシップ型雇用との対比を通じて、ジョブ型雇用の本質的な論点に迫っていきたいと思います。両者は(1)雇用、(2)人事異動、(3)組織の3つの切り口から簡潔に比較できます。

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 まず(1)雇用に関してですが、日本的なメンバーシップ型雇用では、企業には原則、雇用継続の義務があります。仮に、何らかの理由である従業員が従事している職務がなくなったとしても、即座に雇用が終了するわけではなく、配置転換などを通じて雇用を継続しようとします。これに対してジョブ型の場合、職務がなくなるということは、それは雇用の終了を意味します。配置転換までして、雇用を確保しようとする欧米企業は本当にまれです。

 次に(2)異動について、メンバーシップ型では定期的な異動、ローテーションが行われます。従業員は、ある特定の職務に従事するために入社しているわけでないので、要員の充足と、本人の育成を目的とし、部署を超えた異動が定期的に行われます。一方のジョブ型は、ある特定の職務に就くことに合意して入社するため、部署を超えた異動というものは基本的に想定されていません。ある特定の部署の中でスキルアップをしていく、スペシャリスト型のキャリア形成が行われます。

 最後に(3)組織です。ごく簡単にいえば、メンバーシップ型の企業では、ヒトを中心に組織が設計されます。そこに配置された人材に何ができるかによって、職務が組み立てられていきます。例えば、経営企画部長というポストの職務内容が、誰が就くかによって変わっていくのです。ジョブ型では、その様なことはあり得ません。経営戦略を実現するために必要な組織を合理的に考えていきます。まず職務が決まり、そこに適した人を配置するという、職務ありきの組織運用を行います。

 以上、3つの切り口から比較をしてきましたが、両者の違いを総括すると、ジョブ型は特定の職務を担うことへの合意を前提とした雇用、メンバーシップ型はその合意なき雇用といえます。ここに、ジョブ型雇用の本質があります。

 ジョブ型雇用が常識となっている、米国をはじめとした先進国では、労働市場の成り立ち自体がジョブ型雇用を前提としたものになっています。企業は個々の職務単位で人材を採用しようとし、雇用される側も特定の職務に必要な技能を磨き、エンプロイアビリティーを高めようとします。それは、キャリア採用だけに限ったことではなく、学卒採用でも同じです。日本的な新卒の一括採用などは存在せず、学生であってもある職務のスペシャリストとして、企業に採用されていくのです。

 つまり、ジョブ型雇用は、各企業内の雇用政策や人事制度だけに閉じて考えていては不十分で、企業を取り巻く労働市場までを視野に入れて論じていくべきものなのです。今、日本企業が真剣に考えていかねばならないのは、「いまだメンバーシップ型雇用を前提としている日本の労働市場を鑑みつつ、どこまで自社はジョブ型雇用に切り替えるべきか」という論点です。

ジョブ型雇用が目指す姿

 本記事は、以降の連載でジョブ型雇用の詳細を解説していくにあたって、依って立つべき検討の視点を提供することを目的とした内容になっています。そこで一度、ジョブ型雇用が一体どのような姿を目指したものなのかについて、目線を合わせておきたいと思います。

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