タニタで、個人事業主制度を利用するある社員は、「自分の能力を発揮するためには個人事業主に移行した方が有利になると判断した。利益相反になるような取引先でなければ、他社からの仕事も引き受けることができる」と説明する。ただ、同時に「条件面で比較するとタニタの業務の方が有利な場合が多いので、タニタの業務が中心になる」と明かす。
つまり、タニタの場合は、元いた会社への依存度の高い個人事業主制度と捉えることができる。一方でLSPの方は、電通への依存度は低いばかりか、むしろ前述のように電通の側も、退職者に対し、新しい業務範囲の開拓者としての期待をにじませているのではないだろうか。
人生100年時代といわれる昨今、企業人は、定年後の残り40年をどのようにして生きていけばいいのか、答えの見えない時代になった。高度成長期に構築された企業の定年制度は、制度疲労を起こしている。逃げ水のように遠のく可能性のある年金の開始年齢、その年金からは、介護保険料や後期高齢者医療保険料など天引きされる。医療機関での窓口負担も増えるという。
菅義偉内閣総理大臣が掲げた「自助・共助・公助」という政策理念そのままに、現役のうちから定年後の「自助」を意識し、シニア世代をどのように生き抜くかを真剣に考えなければならない時代になったということだろうか。電通が打ち出したLSPという制度が、企業人の人生設計に投げかけた問いは大きい。
「リストラという考えは1ミリもない」 電通「社員の個人事業主化」の真意、発起人を直撃
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