トヨタ自動車は、オウンドメディア『トヨタイムズ』で自社の春闘の様子を公開しています。そこでは賃金交渉だけでなく、労使の代表がキャリア形成やマネジメント、組織体制の在り方などについて真剣に意見を交わす姿が映し出されています。
「専門性を高めていくために、上司との面談でもっと具体的なフィードバックが欲しい」
「技能・意欲を高め続けていくために、全てのメンバーにその機会を等しく与えて欲しい」
「部署や領域をまたいで俯瞰した観点から実務レベルで適切な意思決定ができるように、優先順位や情報について共有の在り方を見直してほしい」
労働組合側から、これらの意見が要求として出され、それを役員などのマネジメント層が真摯に受け止めて回答するというやりとりを見ると、会社運営に良い影響を与える建設的な議論になっているように見受けられます。
労使がなれ合いになってしまってはいけませんが、互いに緊張感を持った中で、トヨタ自動車のように賃金交渉だけでなく、職場の改善点を真摯に議論しあう場としての機能は、意義あるものだと考えます。
しかし、労使交渉の場でどれだけ建設的なやりとりがなされていたとしても、自分事と捉えることができず、やはり冷ややかな目で見てしまう人はいるはずです。そのように見てしまう根底には、労働者側の“標準的勝ちパターンの崩壊”があります。
夫は終身雇用で勤め、妻は専業主婦。高度成長期のころに確立したといわれるスタイルは、一時期まで中間層の「標準的勝ちパターン」といって良かったと思います。しかし今では、その残像を引きずりつつも徐々に失われ、共働き世帯の数が専業主婦世帯の2倍超となっています。
標準的勝ちパターンが失われつつあるのにはさまざまな要因が絡んでいますが、労働者側の意識変化の面では大きく2つ挙げられます。一つは、企業と労働者との関係性の変化です。
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