「どこでも働ける」から「在宅中心」に──自由な働き方を追求するユニリーバはどう変わった? 見直したのは“オフィスの役割”ITmedia人事部長・ミコダが行く:ユニリーバ【後編】(1/2 ページ)

» 2021年02月16日 07時00分 公開
[秋山未里ITmedia]
photo 左から三小田実(アイティメディア管理本部人事部長)と島田由香さん(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長)、対談はオンラインで実施した

 「ダヴ」や「リプトン」など多くの日用品・食品を取り扱うユニリーバの日本法人、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスは、2016年に人事制度「WAA」(ワー、Work from Anywhere and Anytime)を制定した。

WAA(Work from Anywhere and Anytime)とは?

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ユニリーバ・ジャパンが2016年7月1日から導入した人事制度。働く場所・時間を従業員が自由に選べる。業務上の支障がなければ、理由を問わず、自宅、カフェ、図書館など会社以外の場所で働くことができる(※現在は新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務を推奨している)。また、平日午前5時〜午後10時の間で自由に勤務時間・休憩時間を決められる。


 いち早く働く場所と時間を社員が選べる新しい働き方を取り入れ、定着させた秘訣は何なのか──アイティメディアの人事部長、三小田(ミコダ)実が、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田由香さん(取締役人事総務本部長)にインタビューを行った。

 記事の前編中編では、WAAの導入と浸透が成功した秘訣を紹介した。そしてWAAが始まって5年目となる20年、コロナ禍が訪れた。「どこでも働ける」という状態が失われた社会の中で、ユニリーバの働き方はどのように変わっていくのだろうか。

「所定労働時間をなくしたい」――コロナ禍での取り組み

アイティメディア 三小田(以下、三小田): ユニリーバはWAAの導入によって16年から「どこでも働ける状態」でしたが、現在はコロナ禍にあって在宅勤務のみの推奨とされていますよね。コロナ禍で新たに生まれた変化や、課題はありますか?

ユニリーバ 島田さん(以下、島田): おっしゃる通り、今はWAA(Work from Anywhere and Anytime)の“Anyware”が実現できません。移動も減ったし限られた空間にいる、変化のない生活が続くようになりました。社員からは椅子や机が合わない、腰が痛い、スクリーンが欲しいといった身体的な課題を聞くことが多いです。

 小さなお子さんがいらっしゃる方は狭い家の中で仕事と育児の両立で苦労されているという声や、反対に一人暮らしだから人と話すことが少なくなり孤独を感じるという声もあります。

三小田: そういった声には、どのように対応していらっしゃるのでしょうか。

島田: 十分ではないかもしれないですが、いくつかの取り組みを行っています。

photo 島田由香さん(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長)

 EAP(Employee Assistance Program、従業員援助プログラム)を強化して、専門のカウンセラーとお話できる枠を従来より増やしたり、対象を派遣や業務委託の方にも広げたりしています。

 人事制度では、所定労働時間を1カ月で満たさなくてもいいということにしました。現在は法律をクリアする範囲で、2カ月で労働時間を調整するようにしています。このような施策は従業員に対し「あなたのWell Beingが一番大切なのだ」というメッセージを持って、行っています。野望としては、所定労働時間自体をなくしたいですね。

リモート中心でも「オフィスは必要」、その役割とは?

三小田: そのように働き方が変わる中で、オフィスの在り方も変わってくるのではないかと考えています。実はアイティメディアもオフィスの4分の1を返却して、オフィスレイアウトを作り変えている途中です。ユニリーバでは、これからのオフィスについてどのように捉えていますか?

島田: すでにコンセプトを立てて、リノベーションを終了しています。5フロアあったうちの1フロアを返却して縮小しています。

photo ユニリーバ・ジャパンのリニューアル後のオフィス

 もともと20年4月がオフィスの契約が切れるタイミングでしたので、今後のオフィスをどうするかについてコロナ禍以前から役員の中で議論がありました。

 コロナ禍でさらにオフィスについて考えることが増えて「本当に必要なのか」ということも検討しました。その結果、「オフィスは必要だ」と結論付けています。しかし「役割は変わる」と思っています。

三小田: 新しいオフィスにはどのような役割を期待されていますか?

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