勝負には2つあります。「他者との勝負」と「自己との勝負」。自己との勝負を「克己(こっき)」といいます。「己に克つ」とは、自分の中にある弱い心を打ち払い、強い心で自分を推し進めていくことです。怠惰、逃避、悲観、愚痴、放縦など欲望に流される状態は、負荷が少なくラクです。これらは生活のところどころで休息として、癒やしとして、廻り道として必要なものではあるものの、何かを成し遂げるエネルギーにはなりません。何かを成そうと思えば、やはり勤勉・挑戦・楽観・覚悟・自制など強い心が優位にならねばなりません。
私たちは朝起きてから夜寝るまで、いや寝ているさなかでも、つねに思考し、どう行動するかの選択判断をしています。生きる・働くとは、一瞬一瞬の「分岐の連続と選択の蓄積」によって形成されているといってもいいでしょう。
朝、目覚まし時計のアラームが鳴った→予定通り起きた/起きられなかった。午前中に片付ける予定の仕事があった→机に向かい集中して仕上げた/気持ちがダレてしまい午後に延ばした。年初に月3冊の読書を決意した→1年間完遂できた/最初の2ヶ月で挫折した。3年後に留学を決意した→2年が経ち、今も着々準備を進めている/多忙を言い訳に計画を棚上げにしたまま……。このように私たちは、自分の中の強い心と弱い心がつねに綱引きをして、人生を進めていきます。
何十年という長きキャリアの道のりを納得のいくものにするための、あるいは100歳まで生きてしまう時代をよりよく生きるための根幹の戦いは、他者との比較競争ではなく、自己に克つという「内なる戦い」です。
克己という内なる戦いに意識を置く人は、自分の成し遂げたいことの意味を十分に感じ取っていて、そこから内発的なエネルギーを湧かせます。それによって弱い心を打ち払い、負荷を乗り越えていきます。比較すべきは他者ではなく、昨日までの自分です。昨日よりも今日、今日よりも明日の自分がどう成長していくかに関心があります。
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