クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

再度利益上方修正のトヨタ その背景と森氏への苦言池田直渡「週刊モータージャーナル」特別編(2/6 ページ)

» 2021年02月12日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

悪い局面での戦い方

 ちなみに見通しというのは通期での着陸予測値だが、状況に応じてその見通しは変わって行く。期が始まる時点では、5000億円の利益見通しからスタートし、コロナ直撃の最盛期であった3-5月の実績を受けての第1四半期発表では、さすがに予想を据え置いた。しかしここで反転の兆しは見えていたこともあり、下方修正しなかったことがその先につながっている。

 その後、反転が一時的でないことを確認してから、つまり中間決算に当たる第2四半期では、状況を反映し、見通しは1兆3000億円と大幅に引き上げられ、そして今回の第3四半期では再度大幅に引き上げられ、ついに2兆円に達した。それがこの第3四半期の最大の見所である。

 ではなぜそんな歴史的逆転勝利をつかむことができたかをもう少し細かく見ていこう。

 まずは自動車メーカーの基本中の基本、販売台数だ。「連結販売台数(9カ月累計)」を見ると、主要マーケットである日米欧の3拠点で、前年比で累計8割のラインをクリアしている。細かいことをいえば北米がわずかに前年に足りないが、それはこの状況下では誤差の内といえるだろう。

「連結販売台数(9カ月累計)」(トヨタ)

 大規模マーケットで唯一回復が遅れたのは、中国とASEANで形成されるアジアマーケットだが、それでも昨年対比で約7割と、全体の足を大きく引っ張るようなことになっていない。大きな負け越しがないことは戦線を崩さないために極めて重要だ。

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