ちなみに見通しというのは通期での着陸予測値だが、状況に応じてその見通しは変わって行く。期が始まる時点では、5000億円の利益見通しからスタートし、コロナ直撃の最盛期であった3-5月の実績を受けての第1四半期発表では、さすがに予想を据え置いた。しかしここで反転の兆しは見えていたこともあり、下方修正しなかったことがその先につながっている。
その後、反転が一時的でないことを確認してから、つまり中間決算に当たる第2四半期では、状況を反映し、見通しは1兆3000億円と大幅に引き上げられ、そして今回の第3四半期では再度大幅に引き上げられ、ついに2兆円に達した。それがこの第3四半期の最大の見所である。
ではなぜそんな歴史的逆転勝利をつかむことができたかをもう少し細かく見ていこう。
まずは自動車メーカーの基本中の基本、販売台数だ。「連結販売台数(9カ月累計)」を見ると、主要マーケットである日米欧の3拠点で、前年比で累計8割のラインをクリアしている。細かいことをいえば北米がわずかに前年に足りないが、それはこの状況下では誤差の内といえるだろう。
「連結販売台数(9カ月累計)」(トヨタ)
大規模マーケットで唯一回復が遅れたのは、中国とASEANで形成されるアジアマーケットだが、それでも昨年対比で約7割と、全体の足を大きく引っ張るようなことになっていない。大きな負け越しがないことは戦線を崩さないために極めて重要だ。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
- 日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?
フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体の調子がよろしくないのだ。
- MIRAI 可能な限り素晴らしい
すでに富士スピードウェイのショートコースで試乗を試しているトヨタの新型MIRAIを借り出して、2日間のテストドライブに出かけた。
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- マツダの第6世代延命計画は成るか?
マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。
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