クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

再度利益上方修正のトヨタ その背景と森氏への苦言池田直渡「週刊モータージャーナル」特別編(6/6 ページ)

» 2021年02月12日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 最後に、決算から離れた話題ではあるが、森喜朗、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会長の発言についての豊田章男社長のコメントが、執行役員の長田准氏によって読み上げられた。※編注:2月11日夜、森氏は辞任の意向を固めた

トヨタの豊田章男社長

 トヨタは、日本に生まれ、世界各国の多くの方々に支えられ成長してきたグローバル企業でございます。私たちは大変お世話になっている街の人々に笑顔になっていただける街一番の会社を目指して、世界各国で企業活動を行っております。そしてホームタウン、ホームカントリーと同じ様に、私たち人類の故郷である地球というホームプラネットを大切にしたいと考え、SDG'sの目標の実現を目指して日々努力を続けております。

 これはスポーツを通じた平和で差別のない社会、全ての人々が参加できる社会を目指す、オリンピック・パラリンピックの精神そのものでございます。その精神に共感をして私たちはオリンピック・パラリンピックのスポンサーになることにいたしました。しかし、今回の大会組織委員会のリーダーのご発言は、私たちトヨタが大切にしてきた価値観と異なっており、誠に遺憾でございます。

 長田執行役員は、この捕捉として以下のように述べた。

 本件につきましては社内でも議論、相談を重ねて参りました。その上で私たちトヨタが何を大切にしているのか、世界をどのように見ているのかを、皆様に正しくご理解いただくためには、ここで沈黙してはいけないと判断をして今回社長の豊田のコメントを出させていただいたということでございます。

 ざっとニュースを見渡したところ、この豊田社長のコメントに「先頭を切ってよく苦言を呈した」と評価する声が多い。その通りだと思うが、同時に5000億円の黒字見通しを発表した時の姿勢と今回のコメントは同じ根っ子につながっているようにも思える。それは日本のリーディングカンパニーとして「パブリック」の責任を果たす姿勢だと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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