クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

再度利益上方修正のトヨタ その背景と森氏への苦言池田直渡「週刊モータージャーナル」特別編(4/6 ページ)

» 2021年02月12日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 次いでまさにコロナの直撃を受けた「販売面での影響」である。ここにトヨタの運の強さがある。トヨタはTNGA改革の中で「もっといいクルマ」を提唱してきた。それは企業体質を「薄利多売」から「付加価値販売」へ向けてシフトさせてきたことを意味する。いいクルマを作って、それに見合う付加価値価格を設定し、インセンティブ(値引き)を緻密にコントロールしながら安売りを回避する。

 トヨタ全体にとっては「もっといいクルマ」は極めて多面的な目標であるが、こと決算という場面でエッセンシャルに切り取れば、それは高利益率と低い損益分岐点ということになるだろう。

 つまりトヨタは15年に発表したTNGA改革によって、台数の下落による利益ダウンへの影響が薄まるようなかじ取りを行ってきていた。当たり前だが利益は「台数 × 利幅」である。要するに利益を厚くするようにシフトしている最中だったので、台数のダウンをある程度、1台当たりの利益、つまり「構成(ミックス)」で吸収できたのである。

 まさかコロナを予知して行った改革ではないが、リーマンショックの教訓を元に「外乱に強い企業体質」への転換を図ってきた成果がそこに現れている。まさに成果が現れたタイミングでコロナを迎えたという意味では強運ともいえるが、そもそもそういう事態に備えて厳しい改革、つまり準備を行っていなければ、こんな結果になっていない。日頃の備えがこれだけの危機に直面した場面での「販売面での影響」をマイナス6150億円程度で済ませたともいえる。

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