次いでまさにコロナの直撃を受けた「販売面での影響」である。ここにトヨタの運の強さがある。トヨタはTNGA改革の中で「もっといいクルマ」を提唱してきた。それは企業体質を「薄利多売」から「付加価値販売」へ向けてシフトさせてきたことを意味する。いいクルマを作って、それに見合う付加価値価格を設定し、インセンティブ(値引き)を緻密にコントロールしながら安売りを回避する。
トヨタ全体にとっては「もっといいクルマ」は極めて多面的な目標であるが、こと決算という場面でエッセンシャルに切り取れば、それは高利益率と低い損益分岐点ということになるだろう。
つまりトヨタは15年に発表したTNGA改革によって、台数の下落による利益ダウンへの影響が薄まるようなかじ取りを行ってきていた。当たり前だが利益は「台数 × 利幅」である。要するに利益を厚くするようにシフトしている最中だったので、台数のダウンをある程度、1台当たりの利益、つまり「構成(ミックス)」で吸収できたのである。
まさかコロナを予知して行った改革ではないが、リーマンショックの教訓を元に「外乱に強い企業体質」への転換を図ってきた成果がそこに現れている。まさに成果が現れたタイミングでコロナを迎えたという意味では強運ともいえるが、そもそもそういう事態に備えて厳しい改革、つまり準備を行っていなければ、こんな結果になっていない。日頃の備えがこれだけの危機に直面した場面での「販売面での影響」をマイナス6150億円程度で済ませたともいえる。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
- 日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?
フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体の調子がよろしくないのだ。
- MIRAI 可能な限り素晴らしい
すでに富士スピードウェイのショートコースで試乗を試しているトヨタの新型MIRAIを借り出して、2日間のテストドライブに出かけた。
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- マツダの第6世代延命計画は成るか?
マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。
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