次に「連結営業利益増減要因(9カ月累計)」を見よう。例によって左のグレーの柱が19年の4-12月累計で、右の赤い柱が20年4-12月累計となっていて、その間に各種増減要因が区分別にグラフ化されている。
「連結営業利益増減要因(9カ月累計)」(トヨタ)
全体としては、主に台数の影響で、対前年比5313億円と巨額のマイナスだが、それは人類史上初の世界的ロックダウンを招いたコロナ禍での話なので当然だ。ちなみに期首時点での順当な予想がどうだったかといえば、筆者の見立てでは、上半期は真っ赤っかの赤字、それを下半期に埋め戻せるかどうかと思っていた。いろいろうまくいったとしても、利益半減程度まで押し戻せれば祝勝に湧くくらいのつもりでいたのである。
つまり営業減益5313億円という結果は、ざっくりいって1兆円強程度の減益で大成功と予測した筆者の見立ての、わずか半分で切り抜けたということになる。下落真っ逆さまになった悪夢の第1四半期を奇跡の黒字で抜け、第2四半期には早くも利益の積み増しモードに入った。経済小説だったら「ご都合主義ストーリー」と批判されるほどの成果である。
何もかもトヨタに味方したのかといえばそういうわけではない。世界的にリスクが発生する度に上振れする対ドル円レートは3円も円高に振れた。ユーロが1円下がってくれたものの、売上高の大きい北米の方が影響は大きい。「為替変動」は1750億円のマイナス影響である。
そこをトヨタ最大の強みである「原価改善の努力」で1000億円戻した。原価改善はいうまでもなく、単価 × 台数なので、台数が下落した中でこの数字は実はスゴいことなのだが、恐ろしい事にトヨタにとっては日常茶飯事だ。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
- 日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?
フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体の調子がよろしくないのだ。
- MIRAI 可能な限り素晴らしい
すでに富士スピードウェイのショートコースで試乗を試しているトヨタの新型MIRAIを借り出して、2日間のテストドライブに出かけた。
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- マツダの第6世代延命計画は成るか?
マツダはこのFRのラージプラットフォームの開発をやり直す決意をして、発表予定を1年遅らせた。ではその期間をどう戦うのか? マツダは第6世代に第7世代の一部構造を投入してレベルアップさせながらこの遅れ分をカバーしようとしている。キーとなるのが、17年に第6世代の最終モデルとして登場した、マツダ自身が6.5世代と呼ぶ2代目CX-5である。
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