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いま注目の自律分散型組織「ティール組織」とは何か?コロナ禍で(4/4 ページ)

» 2021年02月24日 07時00分 公開
[企業実務]
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 もう一つは目的の手段化です。彼は目的が過度に誇大化され手段に使われているといいます。

 「組織で人が自由に動きすぎるとバラバラになるから制御する必要がある」といった、対象をコントロールするための手段として、目的を使ってしまっているというのです。組織と個々人が常に「私たちは何のために働いているのか」「組織活動を通じて世の中に何を表現しようとしているのか」ということを探求し、実験を繰り返すことが重要だといいます。

 それは、組織のミッション、ビジョン、バリューを文言化し10年、20年の計画を立てるという行為ではなく、組織の目的に耳を澄まし、実験を繰り返すなかで「ああ、私たちはこのために集まっていたのかもしれない」と振り返るような、もっと謙虚な行為であるというのです。

 存在目的とは、よりどころになる指針というより、常に働く個々人が運営のなかで「世界はこの組織に何を望んでいるのか」「この組織がなかったら、世界は何を失うのか」といった問いを真摯に探究し、組織のメンバーと対話している状態と定義したほうが正しいかもしれません。

(3)「全体性」という特徴

 一人一人が存在目的に耳を傾けて日々の仕事を行うことができれば素晴らしいことですが、簡単ではありません。従来の組織には、人々の「恐れ」の部分を引き出してしまう構造があるからです。人が人としてのありのままを職場に持ち込めること。恐れや不安といった外発的なエネルギーで仕事をするのではなく、喜びや楽しさ、そして使命といった内発的なエネルギーをもって創造的に仕事に取り組むことをティール組織は目指しているのです。

 そのために、従来の組織で培われてきたさまざまな仕組みに疑問を投げかけていきます。

 例えば、評価制度です。評価される側は正しく評価されないと不満をもち、ときに給与なども含め他人と比較することにエネルギーを割いてしまいます。

 上司側も膨大な情報とエネルギーを使って部下を評価しますが、一人一人の仕事を細部まで見ることは不可能で、人に差をつけるという作業は気持ちがよいものではありません。

 ティール組織を具体的に見ていくと、その職場の空気に驚きを感じます。そこには仕事が楽しくて仕方がないといった社員の表情や、それぞれが机などに自由にデコレーションを施す仕事環境があります。権威の象徴としての豪華な社長室、統一ブランドという名のもとの画一的な職場、個性を失った制服やスーツなどは目にしなくなります。

 ティール組織で実践されている全体性を育むためのさまざまな方法が図表3です。

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 ここまで、自律分散型組織のティール組織について概観してきました。ティール組織の世界観では人の人生がそうであるように、組織の形もその数だけさまざまです。

 どういった組織に変わっていきたいのかを経営者や一部の人だけが考えるのではなく、働く仲間たちと対話をしながら探求していくことをお勧めします。

 手放したい組織や仕事に対する考え方を、素直に誠実に語り合うことから始まると思います。希望のある組織が生まれていくことを心より願っています。

著者紹介:嘉村 賢州(かむら・けんしゅう)

場とつながりラボhome's vi 代表理事。東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授。『ティール組織(英治出版)』解説者。集団から大規模組織に至るまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。

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