Clubhouseに関わるAgoraとZoom、2人の中国系創業者の意外な接点浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2021年02月25日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

2.Clubhouseは中国で淘汰されたサービスの「温故知新」

 中国版Clubhouseが雨後の筍のごとく出現する一方で、通話アプリそのものは中国では目新しいわけではなかった。特に08年にリリースされた「YY語音」はClubhouseブームで何かと引き合いに出されるようになった。

 YY語音は、ゲーム情報サイトのYY社が08年に開発した通話アプリだ。元々はゲームユーザーの情報交換用にリリースされたが、オンラインでのカラオケ大会、語学学習など用途が広がっていた。

 10年代前半には4億人のユーザーを擁するまでに成長したYY語音は、スマホが普及するとテンセント(騰訊)のWeChatにユーザーを奪われ、運営企業はネットワーク回線や端末スペックの向上により急成長しつつあったライブ配信事業にシフトしていった。ちなみに、YYのライブ配信事業は今年、バイドゥに買収されることが決まっている。

 ITに詳しい中国人にとって、WeChatやライブ配信アプリに淘汰された音声通話がSNSの拡散力をテコにして復活したことは、「温故知新」のようにも映る。そしてClubhouseに音声技術を提供するAgoraの創業者と、YY語音を立ち上げたエンジニアが同一人物であることも、中国VC界隈の大きな関心事となっている。

 Agoraの趙斌(トニー・ジャオ)CEOのプロフィールはあまり知られていないが、時折メディアのインタビューに応じており、また、20年のナスダック上場後は彼の考えやビジョンが発信される機会も増えた。

 ジャオ氏は北京大学を卒業後、97年からシリコンバレーのスタートアップWebEx社で働き始めた。その後、05年ごろ中国に帰国し、起業を経て08年にYYのCTOに就いた。同氏は場所を変えながらも、20年以上にわたってRTC(リアルタイムコミュニケーション)、とりわけ音声通話分野の最前線に立ち続けているのだ。

Agoraの趙斌(トニー・ジャオ)CEOのプロフィール(同氏のLinkedInページより)

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