「社内でも、帰宅時間が遅いほうだった自分は、夕飯を一緒にとれない、子どもの寝顔しか見られない、など家族の時間とのズレを感じていた。今は、基本的にずっと家にいるので、保育園の送り迎えで子どもと触れ合うこともできるし一緒に食事もできる。出社していたときには、自分でも気付いていなかったが、家族に目が、意識が向いていなかった。それが家族の大切さ、家族と過ごす時間の大切さに気付けるようになった」(高橋氏)
田島社長は、テレワークのメリットとして生産性の向上を挙げる。「打ち合わせや取材にかかる時間が正味1時間だとしても、移動のことを考えて2時間半は確保していた。それが今ではぴったり1時間で済む。単純計算でも、生産性が2倍に向上したのが、最大のメリットだと感じる」
出社率が5%となったことで、スペースを活用したリノベーションを今後は行っていくという。「アウトドアキャンプとIoTをかけ合わせたコンセプトを持ったこのオフィスが、わが社のアイデンティティー。ほとんど機会はないかもしれないが、このオフィスに出社することで、『自分たちの属している組織はこういうところなんだ』と意識してもらいたい」と田島社長は語る。
「フェース・トゥ・フェースで集まりたいときに集まれる場所、インタラクティブなことができるリアルなスペースとして残しておき、普段はそれぞれ別の場所で働く。意識を明確にするため、齟齬(そご)をなくすために役立っていたホワイトボードは、Google Jamboardというオンラインホワイトボードを代わりとしたい。そのために、社員にはiPadを配布している最中です」
テレワーク導入について、高橋氏は「当社の場合、すでにさまざまなクラウドツールを使いこなしていたので、技術的には問題なく移行できたが、チームメンバーが見えるところにいない、というのはコミュニケーションを取る上で課題だと感じた。とはいえ、こうした課題も、『ツールを使う』『タイミングを工夫する』などしていけば、解決できる問題だ。そこにいるから仕事の進捗が見える、というものではないということを意識していれば、円滑に行えるのではないか」と話す。
田島社長は、テレワークを導入できるかどうかが採用の有利不利に関わってくるのではないかとも考えている。
「アフターコロナの時代でも、この働き方は残っていくと思う。書類への捺印(なついん)、紙の書類の受け取りなど、出社しなければできないような作業も、どんどんデジタル化が進み、なくなっていくだろう。同じ業種なら、テレワークを許してくれるほうに、優秀な人材は流れていく。生き残りという視点で考えて、在宅を含めたフレキシブルな働き方を導入するというのもアリではないかなと思う」(田島社長)
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