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テレワーク率95%をキープ! “全員原則テレワーク企業”が導入した「Uber手当」「Zoom飲み会代」円滑化の工夫(2/3 ページ)

» 2021年02月26日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 例えば、子どもたちが休校中で家にいる間、ランチで出前を頼みやすいよう、Uber手当を支給。領収書の提出で、最大1万円の手当を出した。また、オフィスに社員たちが出社していた際にかかっていた、福利厚生費用の一部や通勤のための定期代が浮いたので、代わりにリモートワーク手当を毎月1万円支給。自宅で仕事をする分、以前よりかさむ光熱費などに充ててもらった。

 家族がいる中での作業が難しいという課題には、集中できるようサテライトオフィスを準備した。選んだのは「H1T」と「ビッグエコー」(オフィスボックスプラン)。どちらも、六本木や渋谷、大手町など都心部だけでなく、埼玉や千葉、神奈川などでも使える。利用したい社員は、スマートフォンアプリから予約できる。会社がまとめて請求書の支払いをしてくれるため、経費精算の煩わしさもないという。

 そうした手軽さから、社員に一度、使い方を伝えただけで、必要な人はすぐに使い始めたという。「『共働きで、リビングしか仕事する場所がない』という社員の場合、会議の内容が漏れないように(サテライトオフィスを)利用しているようだ」と田島社長は話す。

photo 「新しいものはすぐにやってみたいという社員たちばかりなんです」と笑う田島社長

 もともと「クライアントのある場所から、わざわざ会社に戻ってラップアップミーティングをして、また出掛ける、というのは非効率的だと考えていた」と田島社長。「訪問先の近くに会議できる場所があれば、そこにいったん集まって、そこからそれぞれの訪問先へ散ったほうが効率的。テレワーク以外でも効果的だと感じたため、抵抗感なく導入できた」(同氏)

 コミュニケーション不足という悩みに対しては、どのような対応をしているだろうか。複数のプロジェクトチームをまとめる高橋氏は、「顔が見えない分、小まめにSlackで調子を尋ねたり、自分のほうから情報を開示したりしている」と説明する。

 コミュニケーションを図るため、また抱えている課題を解決するために、前述のサテライトオフィスを利用することもあるという。

 「フェース・トゥ・フェースのミーティングが必要なときには、Slackでメンバーを招集する。それぞれの地域の中間地点あたりにあるサテライトオフィスを使うことで、移動を最小限に抑え、ミーティングを行ったり、場合によっては一緒に作業したりできる。そうして、それぞれの抱く違和感を小さくしていける」(高橋氏)

 歓迎会をZoomで行うこともあったという。ビール代などは「Zoom飲み会」手当として支給した。「Zoomは、今のように認知される前から活用していたので、テレワークになってからもいろいろな使われ方をしている」と田島社長。「本当は、同じ場所で飲み食いしているような一体感や意識の共有ができるよう、全員に同じ銘柄のビールや菓子を送りたかったが、なかなか難しい」と笑う。

 とはいえ田島社長は、「フルテレワークに入ってから、以前より上質で不公平感のないコミュニケーションが取れるようになった」と感じている。「20年4月以降、毎月2人から3人が入社しているが、彼らが出社する初日だけしか顔を合わせられていない。そこで、かなりの頻度で個別にメッセージを送っている」と話す。

 「入社初日、3日後、1週間後、2週間後、3カ月後など、各社員にメッセージを送るタイミングをカレンダーに登録していって、『1週間たったね』とか『早いもので1カ月か』など、重くない内容でメッセージを送る。そうすると、向こうも“人間マーケティングオートメーションツール”のように感じてくれるからか、『実は悩みが出てき始めまして……』などと返してくれる。

 出社していたときにも、できるだけ声をかけていたが、結局たまたま会えた人としか話せていなかった。それが今では公平にコミュニケーションが取れる。個別メッセージのやりとりも増えたので、コミュニケーションという点では今のほうが良くなったかもしれない」(田島社長)

テレワーク率を高めると、大切なものが見えてきた

 テレワーク環境下では、コミュニケーションを取りづらい、自宅では集中しづらいなどの課題がないわけではないが、メリットのほうが多いと両氏は考えている。高橋氏は「家族との時間が増えたのが大きなメリットだ」という。

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