その理由は、当初の導入目的であった「最適なオペレーション」の実現だ。もちろん最適なオペレーションによる売り上げアップの期待もあるが、人手不足の中オペレーターが働きやすい環境を作るために「無駄を減らしたい」という思いがあったという。
何かしらの商品が売り切れてしまったまま放置されてしまうことを防ぐため、売り上げの大きくない自販機でも2日に1回など、補充の頻度を決めて対応している。商品選定や配置を最適化し、売り上げの予測結果から、売り切れるまでの日数を計算するなどして、補充を3日に1回に減らせることができれば、効率は上がる。特に1駅に1台の自販機しかない場合などは、訪問頻度を減らすことが大幅な業務効率の改善につながる。
また、周辺にある自販機をグルーピングして、A自販機よりB自販機のほうが○○商品は売れるから、Aからそれを抜いてBで2列分の棚を確保する、といった調整も提案する。売り上げアップだけではなくそのような効率化にもHIVERY Enhanceは有効だという。
「この件に限らず、例えば現金処理を減らすため交通系ICカードによる決済機能を自販機にもたせているように、会社全体で業務効率化を目指しています。システムの導入には、自販機に関係したオペレーションを少しでも楽にしたいという思いがありました」
本格導入まで3年間の軌跡の中で、JR東日本ウォータービジネスとHIVERYはともに意見を出し合いながら、はじめは日本語対応もしていなかったシステムを実際に運用するところまで改善してきた。実際に使用するオペレーション企業の担当者が直感的に使いやすいインタフェースにこだわり、改善を積み重ねているという。
しかし、東野さんはこれで終わりではないと考えている。自販機運営には「話し切れないほど多くのオペレーションルール」があり、それらを加味した提案ができるようにしたいためだ。現在は、商品のポスターが掲出されている自販機には必ずその商品を入れておく、ホットドリンクを入れられるのは最大半分までで場所も決まっている──などのルールは、オペレーターが判断して、対応している。
さらに、商品選定への活用も期待している。現状は過去の実績を読み取って、指定した商品の中から売れるものを推測する形だが、需要予測の要素を伸ばしていきたいという。そうすることで、「シーズンごとに指定している130商品を決める際にも、適切なものを選べるようになるのではないか」と考えている。
「JR東日本グループにはさまざまな会社があります。コンビニやキオスクなどもあります。そういったグループ全体でAIを活用できたら、もっと無駄をなくせます。そしてそれが働き方改革につながり、業界が持つ課題解決にもつながっていくのではないかと思います」(東野さん)
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