クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダ初の「MX-30 EV」 姿を現したフルスペックのGVC池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2021年03月08日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

バッテリーが半端な時代に

 それは取りも直さず、バッテリーの諸問題と直結している。価格と原材料調達、あるいは生産キャパシティという面でバッテリーには今後のブレークスルーが求められている。「国内メーカーのバッテリー問題は、日本のメーカーの努力が不足しているからであって、テスラを筆頭にそんな局面はとっくに過ぎている」という意見は当然想定しているが、考えてもみてほしい。そのEVのリーダーたるテスラが、今以てなお「航続距離が伸びました」とか「次世代モデルは衝撃的に安くなります」と訴求し、それがEVファンの間でホットな話題として取り沙汰されている。

 もし、進歩が行き着くところまで行き着いてしまえば、もう航続距離は売り文句にならない。内燃機関車やハイブリッド(HV)ではどのメーカーも航続距離のアピールなどしないし、仮にアピールしたとしても顧客にとって意味がないので、どこの誰も話題にしない。航続距離がアピールポイントになるということは取りも直さず、それについて、まだ顧客の満足を得られていないということである。

 価格もそうだ。多くの商品が競い合えば、やがて価格は均衡ポイントを迎え、突出して価格破壊することは誰もできなくなり、ドングリの背比べのレベルで競うことになる。衝撃的に安くなるどころか、新規の規制対応や、機能向上というたゆまぬ進歩によって価格はジリジリ上がっていくはずである。

 つまり、バッテリーはまだまだ成長過程にあって、先に挙げた課題は、裏返せばこれからもまだ成長余地を十分に残していることを意味する。だからこそバッテリー回りの話題は熱いトピックスになり得るわけだ。そしてまだまだバッテリーが実力不足の今、それをガッツで乗り越えようとファイティングポーズを取り続けるのがテスラの偉いところではあるのだが、それは同時にバッテリーの現状を認めずに背を向ける行為でもある。現状と未来は表裏の関係にあるからだ。

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