さて、これらの上にモーター駆動力を持つクルマ用にさらに機能を追加したのがeGVCである。EVならではの回生ブレーキを使うことで、減速Gのレスポンスと量の制御精度が上がったことがひとつ。もうひとつは加速側での制御を使えるようになったことが大きい。ドライバーに違和感ないヨーコントロールにおいて、加速側で使おうとするとエンジンでは応答性が足りない。減速側は良いのだが、加速側で使おうとすると、GVCの求める微細領域でコントロールするにはエンジンは粗雑だった。違和感が消せない。だからGVCは減速のみでコントロールを行ってきたのである。
しかし、モーターであれば微細領域のトルクコントロールが容易なため、GVCの制御を減速側だけでなく加速側でも使えるようになった。これこそが、GVCのフルスペックだ。どんな時にも思った通りに自然に曲がる能力を、eGVCはマツダの電動化にもたらしたのである。
面白いほど自然に曲がる。システムの介入を感じさせず、まるで自分の運転が上手くなったかのようにキレイに曲がるクルマができた。筆者は「池田さんはいつもGVCを褒めるけど、効いているのかどうか全然分からない」と言われることが多いが、それでいいのだ。
GVCは効いていることをドライバーに気取られたら負けなのだ。例えば何らかの悪条件が重なって、アンダーステアが出そうな状態でコーナーへアプローチした際も、それが結果に出ない。失敗してもそれを黒子のようにフォローする。それはマツダが長らく主張してきた「人馬一体」の新境地である。
フロントフードの中は、右側がスカスカ。ここにはやがてロータリーエンジンが搭載されてPHVになる模様。またバッテリーの温度管理のためにエアコンの高圧パイプが複雑に取り回されていることがよく分かる
- マツダMX-30で1800キロ走って見えたもの
そもそもMX-30に与えられた使命は、電動化の牽引役だ。年明けにはいよいよ国内でもEVが出る。これは以前プロトタイプに乗ったが、スーパーハンドリングマシーンと呼べる出来になるはずである。次の時代に向けた実験的取り組みは、全てこのMX-30がテストベッドになる。そのクルマの基礎素養がこれだけ好もしいものであったことで、期待は高まろうというものだ。
- MX-30にだまされるな
マツダの電動化の嚆矢(こうし)となるMX-30をどう見るか? このクルマのキャラクターをつかもうと思うのであれば、変化球モデルだと思わない、スポーツ系モデルだと思わない、ついでにフリースタイルドアのことも電動化のことも全部忘れる。そうやって全部の先入観を排除して、普通のCセグのSUVだと思って乗ってみてほしい。その素直で真面目な出来にびっくりするだろう。
- マツダのEVは何が新しいのか?(前編)
東京モーターショーの見どころの1つは、マツダ初のEVであるMX-30だ。クルマの生産から廃棄までの全過程を通して見たときのCO2負荷を精査した結果、35.5kWhというどこよりも小さいバッテリーを搭載した。世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30だ。
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おそらく2020年は日本の自動車のビンテージイヤーになると思う。20年のクルマたちは、もっと総合的な能力で世界トップといえる実力を持っている。その総合力とは何かといわれると、それはおそらくリニアリティの圧倒的な向上だ。
- テスラ、モデル3を最大156万円値下げ 最廉価モデルは429万円に
テスラジャパンはミドルクラスのEV「モデル3」を値下げした。ラインアップ3車種のうち、ミドルレンジの「ロングレンジAWD」では655万2000円(税込、以下同)を499万円へと156万円値下げ。ローエンドの「スタンダードレンジ プラス」は511万円から429万円へ下げた。
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