テレワークは、これを行う労働者の勤務の実態が、評価する者の目には見えづらい勤務形態です。そのため、テレワークを実施する場合、評価する側は、部下の仕事の評価が難しいと感じ、評価される側は、自分の仕事が適切に評価されているのか不安に感じるようです。
そこで、人事評価制度を再構築する際には、テレワークを行う労働者の業績評価等について、その評価者や労働者が懸念を抱くことがないよう、評価制度および賃金制度を明確にすることが望ましいといえます。
特に、業績評価や人事管理に関して、テレワークを行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましいでしょう。
なお、テレワークを行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければならないこととされています(労働基準法89条2号)。
人事評価を行う場合には、当該評価が強行法規(労働基準法3条の均等待遇等)に違反しないことのほか、これが公正になされることが必要です。
そして、「いつまでに何をする」といった形で、仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、テレワークの場合であっても職場での勤務と同様の評価が可能であるので、評価者に対して、労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないように注意喚起することが望ましいといえます。
また、テレワーク開始から一定期間ごとに、評価者である上司とテレワークを行う労働者の間で、業務内容とその成果について共通理解を深めることが重要です。
人事評価は、従業員の能力を最大限に活用し、モチベーションを高め、企業を発展させるうえで重要な意味をもつものです。そのため、テレワークを実施するにあたって、人事評価制度をいかに構築するか、いかに適切な人事評価を行うかは、今後の重要な課題となってくるでしょう。
その際、テレワークを実施している労働者とそうでない労働者の評価が公正に行われるよう、評価者である上司とテレワークを行う部下のコミュニケーションを徹底すること、特に上司の部下に対する働きかけを促すなど、上司の意識啓発を行っていくことが重要といえます。
【参考文献】厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成30年2月22日)
同志社大学法学部法律学科卒、平成18年10月弁護士登録。平成31年4月小笠原六川国際総合法律事務所入所。東京弁護士会所属。
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