AI insideの衝撃【前編】売上を250%成長させるSaaSの逆セオリー(5/7 ページ)

» 2021年03月12日 05時00分 公開
[早船明夫ITmedia]

エクスポネンシャルな成長を可能にしたSaaSの逆セオリー

 SaaS企業の多くは、「THE Model」に見られるような、マーケティングからカスタマーサクセスチームまでを自社内で持つ強力な直販体制を構築しています。またSaaSは「永遠のβ版」ともいわれるほど、頻繁に機能変更や改善が行われるため、社内でプロダクトやユーザーに関する情報のフィードバックサイクルを回すことが競争優位につながる側面があります。

 このような状況から、販売チャネルのみを外部に切り出すことは容易ではなく、SalesforceなどのSaaS企業は長らく直販をメインとした販売展開に力を入れてきました。

 一方で、AI insideは18年頃までは自社展開メインでプロダクトクオリティの向上を図った後、19年から一気に代理店、OEM販売、製品連携パートナーの拡充といった外部販売チャネル重視に舵(かじ)を切りました。

 これにより顧客獲得のための営業タッチポイントが飛躍的に増加。売上高を大きく伸ばし、自社リソースによる直販体制では成し得ない、2年連続での200%超えの成長を達成しつつあります。

AI inside業績推移

 「もともとAI-OCRを自社展開していた大手SIerに、プロダクト品質面の高さから、DX Suiteへ切り替えて一気に拡販いただけた」(渡久地氏)という通り、同社の圧倒的な製品精度の高さを起点としながらも、RPAに続く主力商品としてAI OCRの販売強化を模索していたSIerやIT商社などの代理店側のニーズにうまくハマったことが成功の要因と振り返ります。

AI inside販売パートナー

 このような強力な販売ネットワークを持つことから、「ほぼ広告宣伝費をかけていない」(渡久地氏)ため売り上げに占める販売管理費率は極めて低く、営業利益率51.9%と、先行投資による赤字も多く見られるSaaS企業とは一線を画した「高成長にして高収益企業」となっています。

SaaS企業の営業利益率

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