育児・介護休業法でいう「休業」とは、労働契約関係が存続したまま労働者の労務提供義務が消滅することをいい、労働基準法89条1号の「休暇」に含まれます。
例えば、労働基準法39条の年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものですので、育児休業を申し出た後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はありません。
また、「休暇」と「休業」とを厳密に区別するような基準はありませんが、「休暇」のうち、連続して取得することが一般的であるものを「休業」としている用語例(労働基準法65条の「産前産後休業」など)にならったものとされています。
なお、民法536条により、休業期間中の事業主の賃金支払義務は消滅します。従って、休業期間中の労働者に対する賃金の支払いを義務付けるものではありません。
しかし、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協定に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払いの義務が生じます(平3.12.20基発712)。
育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、恒常的・定期的に就労する場合は、育児・介護休業法上の育児休業を取得していることにはなりません。
労働政策審議会雇用環境・均等分科会資料では、育児休業中の就労の取扱いについて「本来、子の養育をしていなければ育児休業の要件を満たさないこととなるが、この場合に当然育児休業が終了するものとすることは、労働者にとって酷となるだけでなく、事業主にとっても要員管理が不安定になるものとなるため、そのような扱いを行っていないところ」であると説明しています。
しかし、育児休業中の就労について、労使の話合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することは可能です。
一時的・臨時的な就労は、事業主の一方的な指示により就労させることはできず、労働者が自ら事業主の求めに応じ、合意することが必要です。
育児休業中の賃金は、労働契約に委ねられ、特別の合意がなければノーワーク・ノーペイの原則により無給となりますが、雇用保険法によって、一定の要件を満たした場合には雇用保険制度から休業開始前賃金の一定割合が育児休業給付金として支給されます(図表2)。
具体的には、被保険者が一定の年齢の子を養育するために育児休業を取得した場合に、休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上あるなどの条件を満たせば給付を受けることができます。
育児休業給付金の支給額は、支給単位期間(育児休業を開始した日から起算した1カ月ごとの期間)当たり、原則として休業開始時賃金月額×支給日数の50%(休業開始後6カ月間は67%)相当額となっています。
ただし、支給単位期間中に就業した日が10日を超えて、かつ就業時間が80時間を超えるときは、育児休業給付金は支給されません。
逆に言うと、一時的・臨時的に就労する場合は、就労が支給単位期間ごとに月10日(10日を超える場合は80時間)以下である場合に、育児休業給付金が支給されます。
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