一時的・臨時的に就労する場合とは、図表3のような場合があります。これらは例示であり、紹介されたケース以外でも「一時的・臨時的就労」に該当する場合があります。
他方、次のようなケースでは、一時的・臨時的に就労する場合には該当しないとされています。
「労働者が育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合」(厚生労働省「育児休業中の就労について」)。
事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由として、不利益な取扱い(人事考課において不利益な評価をするなど)を行ってはなりません。
さらに、上司や同僚からのハラスメントが起きないように、雇用管理上必要な措置を講ずる必要があります。
また、育児休業の時期にある従業員を対象にした、在宅勤務や短時間勤務制度などを設けることについては、育児休業をすることと恒常的・定期的に就労することとは両立しませんので、育児休業中の従業員を対象とする在宅勤務制度や短時間勤務制度を設けても、育児・介護休業法上の育児休業をしていることにはなりません。
育児休業中の社会保険は免除になりますが、育児休業中の従業員を対象とした在宅勤務制度や短時間勤務制度を設けても、社会保険料の免除の対象にはなりません。
なお、企業には、原則として3歳に満たない子を養育する労働者が利用できる短時間勤務制度を講ずることが義務付けられています。これに加えて、企業独自に在宅勤務制度などを導入することは、問題ありません。
図表4は、ある企業の女性労働者の育児休業中の就労事例です。
育児と仕事の両立を希望する労働者に、「休業か就労か」という二者択一を迫るのではなく、休業中も働き続けるという選択肢があることで、専門性や知識を生かし、育児休業中も社会や会社とつながることが可能となれば、労働者のモチベーションアップにもつながります。
労働者は育児休業中の収入を増やすことも可能で、さらに、育児休業後も円滑に職場復帰ができるようになります。
しかしながら、一時的・臨時的に就労する労働者の育児の状況により、臨時稼働できる仕事の内容が異なることに配慮が必要です。育児の状況が、日中も寝てくれる子どもなのか、ぐずる時間が多い子どもなのか、またはパートナーも育児休業中なのかなど、個々の事情に応じたマネジメントが必要になります。
そのためには、管理職のマネジメントスキル、特に部下にどのように意欲的に仕事に取り組んでもらうかというヒューマンスキルが重要になります。
育児休業中であり、さらにコロナ禍ということもあり、直接会えない状況で、部下とどう信頼関係を築き、いかに効率的に働いてもらうか、テレワークという働き方を前提としたマネジメント手法を確立するために、会社が管理職を支援することが必要です。
就労時間は育児休業給付の支給の有無に関わりますので、仕事内容と作業目安時間をセットで指示を出すことや突発時に対応できるように仕事の棚卸しやマニュアルの整備等を含めた働き方改革に取り組むことは重要です。
政府は、男性の育児休業取得促進を目的として、希望者全員が育児休業を取得できる環境をつくるため、個別に育児休業の取得を推奨する義務を課し、特に産後8週間以内の取得を促進する枠組みの導入などが盛り込まれた育児・介護休業法の改正案をことしの通常国会に提出し、2022年度からの実施を目指しています。
夫婦でともに育児と家計を担える道を広げることは、労働者の希望するワークライフバランスを実現し、効率的に働いてもらうことにもつながります。
税や社会保険制度の在り方を含め、少子化をもたらしている仕組みを変えていく構造改革を伴ってこそ、年間5兆円もの予算を投じている少子化対策が生きてくるはずです。
企業としては、コロナ禍であっても仕事と育児を両立しやすい環境づくりに積極的に取り組み、支援体制を整えておきましょう。
合同会社パリテ/代表社員/特定社会保険労務士
人事・労務管理をはじめ、経営戦略としてのワークライフバランス導入支援、メンタルヘルス支援などに注力する。ワークライフバランス情報サイト『ワークライフバランスの森R』を運営。
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