オンボーディングは「内定承諾時から始まっている」! 入社辞退・早期退職を防ぐコツこれからの採用戦略を考える(3)(3/3 ページ)

» 2021年04月16日 07時00分 公開
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 目標達成のために必要なトレーニング資料がどこにあるか、どのように活用できるかを示すことは企業の義務といえるだろう。目標達成の評価・レビューの日程は、3〜6カ月先であってもあらかじめカレンダーに入れる。いつまでに達成するかが決まっていないと、アクションプランを立てることが出来ない。また、期日が明確化されていることが、入社者の意識をはっきりとさせ、気持ちを引き締め、ゴールに向かって突き進みやすくすることにもつながる。

 設定した目標の内容や期日は、必ず明文化する。後になって認識相違が発生し、問題になることを防ぐためだ。外資系企業では特に、目標を達成できるか否かが試用期間の合否を決める厳しい側面を持つ。一日を争うことになるため、入社後すぐに目標設定を行う必要がある。

 目標達成に向けた業務面と慣れない環境でのメンタル面のフォローのために、上司とのキャッチアップミーティングを取り入れるのが良い。業務面では、定量面・定性面での成果を確認し、何が良かったか、今後さらにどう生かして欲しいか、何が問題で、今後どのように改善して欲しいかについて話し合う。

 時に人事との面談を交え、上司からの一方的なフィードバックにならないよう、注意したい。面談には、入社者の不安を払拭する目的も含んでいる。入社直後や、数カ月の試用期間に誰からも気に掛けてもらえないと、孤独感や疎外感を感じ、気持ちを削いでしまう。自分が大事にされていることや、会社の一員でいる安心感を実感してもらうために、始めのうちは週1回は面談をした方が良い。3カ月より長くなってくれば、その人の状態や業務などに合わせて2週間に1回程度にするなどの調整を検討しても良い。

 これら全てを入社者の上司任せにすると、負担が大きく、能力によっても差が生じてしまう。そのため、オンボーディングパッケージとして体系化し、人事の管轄で管理を行うのが良い。一連の流れや書類がパッケージ化されていれば、人事から担当上司へ、毎回一つ一つの説明をする手間を省くことができる。目標や期日が記載された書類が用意されていれば、入社者との間で言った言わないのトラブルもなくなる。オンボーディングの精度が保たれるようになるだけでなく、企業として入社者のオンボーディングに向き合うことにもなる。パッケージとして用意している企業はまだあまり多くないが、形にしておいた方がメリットが大きい。

オンボーディングで人事が行うこと

 オンボーディングで人事が注意すべきポイントは、仕事に必要な機器や環境がそろっているかの確認と、メンタル面でのケアである。入社者によっては、直接意見を伝えることが苦手な人もいるので、対面での対話だけなく、オンラインのアンケートツールなどを用いて、非対面で率直な意見や感情を拾う工夫も有効だ。

 オンボーディングに注力していない、または実施していない企業にも、オンボーディングの必要性をあらためて理解していただきたい。中途入社だから、希望して転職してきたのだから、ということでは済まされない。オンボーディングをしっかりと行うことが、会社への貢献度、エンゲージメント、定着率を上げ、ひいては組織力を上げることにつながる。

著者紹介:狐崎壮史(きつねざきたけし)

エンワールド・ジャパン株式会社 人材紹介事業部 営業統括部長/ヴァイスプレジデント 

海外営業などを経験した後、2006年にイギリス系の人材紹介会社にて人材紹介のキャリアをスタート。金融業界をはじめ、製薬・ヘルスケア業界、リテール業界・製造・流通、インターネット業界など幅広い業界における社内ITポジションの採用/転職を専門とするチームをマネジメント。2018年にIT企業/人材を専門とした営業部門のディレクター(部長)としてエンワールド・ジャパンに参画。2019年、外資系企業・日系グローバル企業の正社員採用を支援する営業部門全体の統括部長に就任。


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