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» 2021年04月28日 07時00分 公開

出向によって社員の成長を促す JALの人事部に聞く、3つの目的(1/2 ページ)

コロナ禍で、苦しい時期を過ごしている日本航空(JAL)。多くの社員を他企業へ出向させているが「人件費の削減を第一優先に置いたことはない」という。では、その目的は何か。

[リクルートワークス研究所]

 コロナ禍にあって、経営に深刻な打撃を受けた業種の企業を中心に、従業員シェアや出向という方法を用いて危機を乗り越えようとする例が見られた。それは単に余剰人員の解消だけではなく、社員の成長の支援という意味でも人事が注目したい方法論だ。

 コロナ禍でもっとも影響を受けた業界の一つが、航空業界である。そのなかにあって、日本航空(以下JAL)も極端な減便や国際旅客の減少などにより2020年春から苦しい時期を過ごしている。「当社は一度、2010年に経営破綻を経験しており、本業以外の関連事業を売却し、スリム化しました。その後、本業に注力した“一本足打法”から脱却し新規事業を少しずつ展開していくべき、と考えつつも収益化がまだ十分でない時期にコロナがやってきました」と、人財本部人事部人事第1グループマネジャー(2021年3月時点)の松浦幸平氏は話す。

 現在、同社では多くの社員を他企業へ出向させている。「報道では、“人件費を減らすため”という枕詞(まくらことば)をつけて語られることが多いですが、当社では出向について人件費の削減を第一優先に置いたことはありません」(松浦氏)。では、その目的は何か。

リクルートワークス研究所『Works』

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 『Works』は「人事が変われば、社会が変わる」を提唱する人事プロフェッショナルのための研究雑誌です。

               

 本記事は『Works』165号(2021年4月発行)「Part 2 社員の能力・スキルの向上と変容をいかに行っていくか」より「方法2:出向によって社員の成長を促す」を一部編集の上、転載したものです。


「これを機会に今までできなかったことをしよう」

 「コロナ禍が本格化した2020年春頃という比較的早い段階から、議論を重ねてきました」(松浦氏)。その議論の前提となったのは、同社代表取締役社長の赤坂祐二氏の、「今までできなかったことに挑戦できるチャンスだ」というメッセージだったという。「感染拡大以前は本業が忙しく、安全を大前提にいかにして生産性を上げるかということに注力していたこともあり、急に時間に余裕ができた際に何を目的とするのか方向性を決める必要があったのです」(松浦氏)

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 議論の結果、目的は3つに集約された。それは「世の中のため、社員のため、会社のため」(松浦氏)だ。

 1つ目は社会への貢献である。「コロナ禍において、われわれの事業では人に余力ができましたが、逆に医療の現場を中心に人手不足に陥っている業種はたくさんあります。私たちは経営破綻時に、多くの社会の皆さまよりご理解とご支援をいただきました。その恩返しを今こそすべきだと考えています」(松浦氏)。2つ目は、社員の成長につながることだ。「コロナ禍が落ち着いたのち、反転攻勢するために一人一人の社員の力を蓄えるのが今のミッションです」(松浦氏)。そして、最後がJALの新規事業を成長・拡大させていくための仕込みである。

 この3つをそれぞれ社外・社内向けに分けて何ができるかアイデアを出し、目的に沿ったものから着手していったという。「この目的のどこにも人件費を抑える、という言葉は出てきません。人が余っているから社外へ出向させるのではなく、目的を達成するための手段なのです」(松浦氏)

 今までできなかったことをやる。それによって、社会に貢献し、人も会社も成長する。これが、全員が未来を見通す“ストーリー”となった。

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モチベーション高く価値を発揮できることを重視

 出向の主たる目的は、社員の成長である。その目的の達成のために、どのように進めているのか。

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