――なぜ「なるほど家電」と標榜するようになったのでしょうか。
「なるほど家電」というキーワードが出てきたのは15年です。ちょうどマットなしのコンパクトな布団乾燥機を発売した頃です。当社の家電は、特徴的な機能を備える製品が多く、使ってみると「なるほど(便利)」と感じる、という意見を多くいただきました。
その頃はホームセンターを中心に家電製品の販売を行っていたのですが、他製品と差別化するために「なるほど家電」という言葉を販促用に使うようになりました。そこからだんだんと「なるほど」製品が増えて、今では「なるほど家電」はアイリスオーヤマの家電の代名詞になっています。意外と自然発生的に生まれたワードでしたね。
マットレスなしのコンパクトさが人気を博した布団乾燥機「カラリエ」。後継機種は、現在でも同社の人気製品の1つ
――「なるほど家電」のコンセプトを持つ、最初の製品は何だったのでしょうか・
当時はまだ「なるほど家電」という言葉はなかったのですが、最初の製品は「2口IHクッキングヒーター」でした。キッチンでガスコンロを置く台に設置するタイプのIHヒーターは、当時は200ボルト電源の製品しかありませんでした。しかしそうなると、設置に電気工事が必要になってしまい、特に賃貸住宅などでは大家さんの判断が必要になるため、購入したくてもできないという声がありました。
そこで我々は、2口タイプのIHクッキングヒーターを100ボルト電源の製品として開発し、電気工事せずに、一般的なコンセントから電源が取れるようにしました。100ボルトタイプの2口IHということで業界常識を覆した製品となっています。賃貸住宅でも、ユーザーさんが自分でサッと設置できる点が高評価をいただきました。
開発当時、IHクッキングヒーター業界は、いかに火力を高くできるかを競っている状態でした。しかし当社の開発部では「一人暮らしなら、2口を同時に最強火で利用することはほぼないのではないか」という結論に達しました。
この製品は1口で使うと1400ワットの大火力を利用できるものの、2口の合計が1400ワットを超えない仕様になっており、そのため100ボルトの電源での利用に成功しています。片方が900ワットを使っていれば、もう片方は500ワット以下で使用するといった制限はありますが、非常に人気が高く今では定番製品となっています。
当時、200ボルトが主流だった2口タイプのIHクッキングヒーターを100ボルトに改良して発売した「2口IHクッキングヒーター」。電気工事の行えない賃貸住宅でも気軽に利用でき、人気となった
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