――そのような「業界常識」を覆すアイデアは、どこから出てくるのでしょう。
アイリスオーヤマは製品企画の手法が、大手家電メーカーとそもそも違います。企画部のような部署はなく、企画を出すのは開発者やエンジニアです。開発者やその奥さんや家族が実生活で感じた問題点など、当人が感じた不便からモノを生み出すというのが我が社の特徴です。当社ではこれをユーザーインと呼んでいます。ユーザー目線で考えて開発するという意味ですね。
製品開発に最新鋭の技術が必須という企業もありますが、アイリスオーヤマでは、最新鋭の技術が製品に必要とは考えていません。例えば最近のコードレスクリーナーでは、本体重量で「業界最軽量」を競い、100グラム単位で軽量化が行われています。弊社の製品開発では、競合ばかり見ることなく、あくまでもお客様の使いやすさを優先しています。
またマーケティングというのは、過去を調べて未来を予測するものです。過去を調べても、新しいものをひらめくとは限らないので、マーケティングよりも「いま不便に感じるモノはなにか」を重視するようにしています。
――ユーザーインが最も反映されている、アイリスオーヤマらしい製品はどれでしょうか。
静電モップ付きスティッククリーナーは非常にユーザーインな製品で、アイリスオーヤマならではの製品だと思います。まず、他社の場合ですと掃除機は掃除機部門の人間が専門で開発していることが多い。このため、そもそも「掃除機に静電モップをつける」という発想が出ないのではないでしょうか。
――以前あった「乾燥機能のないドラム式洗濯機」など、それまでにない製品の場合に社内から反対の声はないのですか。
新製品の企画は、毎週月曜日に行われる全社でのプレゼン会議で審査されます。このとき「この企画は個人のニーズでしかなく、一般には受けないだろう」といった企画内容に関する審査があるほか、開発〜販売までの工程においてリスクの大きいものが却下されます。10〜20個のアイデアを出して、そこから会議を通過して、着手まで進むのは半分以下になりますね。
このプレゼン会議で重視されるのは、商品の機能と値ごろ感のある販売価格です。その製品をユーザーとして見たときに「この機能が搭載されて、この値段なら買う」と思えるなら通過する、といった具合に、意外と感覚的な判断で新製品の企画が通過していきます。
ちなみに、我々が開発コンセプトとして目指しているのは「SRG」で、Sはシンプル、Rはリーズナブル、Gはグッドです。シンプルというのは、必要のない多機能化はしない代わりに必要な機能はしっかり搭載すること。リーズナブルは「値ごろ感」のある製品であること。アイリスオーヤマの製品は安いとよく言われますが、安い製品を目指しているわけではありません。ただ「この機能が搭載されているなら、この値段なら買いたい」という高すぎず安すぎないという値段を目指しているのです。最後のグッドは、最高であるベストではなく、自分が欲しい機能といったちょうどよい機能をバランスよく搭載した製品を目指すという意味です。
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