社内で用意しているのが「Co育て休暇」制度である。これは、法定の産前産後休暇・育児休暇の期間以上に、妊活のための休暇や、子どもだけでなく孫の看護や検診、学校行事への参加のための休暇を取得できるもの。内縁関係にある人から結婚している人、子どものいる人、孫のいる人が幅広く対象者となる。
この休暇のメニューの一つとして、2019年4月から5日間の男性育休を必須とした。すると2017年には4%だったのが38%まで改善した。
「ところが、数字は向上したのですが、取得者にヒアリングしてみると目的が達成できていないことが分かりました。夫婦が一緒に子育てすることで、子どもにいい影響を与えるという研究結果を踏まえての取り組みですが、取得した社員に聞くと、通常の有給休暇とあまり変わらない」「子どもと向き合う時間は取れたけど、本格的な育児参画には程遠い」などの声が多数ありました。
さらに行動変容を促す必要があるとして、2020年1月、新制度「Co 育てMonth(正式制度名:Co 育て出産時休暇)」が作られた。子どもの出生後6カ月以内に1カ月間の有給休暇を取得することを必須化したものである。
「本気で育児に取り組んでもらうため、会社で貸与しているパソコンやスマートフォンも一時返却してもらっています。その代わりに、育休者でも閲覧可能なコミュニティーを開設しています」という徹底ぶりだが、取得率はなんと100%に。
「2017年からの3年でこれだけ変容するのだという結果にも驚きました」と宮崎氏は振り返る。ただ、社員に「Co 育てMonth」を告知したときは、「1カ月も休むなんて」という声も少なからずあったという。
「想定内でした」という宮崎氏が関連部門と連携して実施したことは、取得前にどんな準備をしたか、何が大変だったかなど、取得者やその上司、同僚など周囲の人の生の声をイントラネットに掲載することだった。配偶者にも取得後当人や家族関係がどう変わったかなど聞いて記事として掲載した。
取得者のなかには、取得前に自分の業務を細かく一覧化して引継ぎに困らないようにしていた人や、抜け漏れ等のトラブルを未然に防げるよう、関係者へリマインドメールを送る仕組みを活用した人もいた。「こうした工夫は、これから取得を考えている社員にとても役立ちます」とノウハウ共有のために体験者の声を紹介する大切さを語る。
記事をアレンジして採用ページに掲載したところ、「こういう会社で働きたい」と、子育てへの取り組みを就職志望理由としてあげる学生も出てきた。
上期でこのように取得者の紹介をして、下期ではガイドブックを作成。「イクボス」の手引き、「仕事と育児」の両立法などのテーマが並ぶ(図表1)。
こうした啓発活動について、宮崎氏は「制度とコミュニケーションは手を結んでおかないといけないと思っています。せっかくいい制度が作られたとしても、その情報を届けられなかったら意味がありません。ネガティブな声があってもそれを吸い上げて反映させる循環が必要です。問題が出てきたとき、制度で解消できるのか、コミュニケーションで解消できるのか、あるいは別の方法があるのかといったことを常に考えています」と取り組みのコツを語る。
とはいえ、1カ月も休む・休ませるのには、壁は高かったに違いない。どう進めたのだろうか。
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