大ブームから大凋落の“シェア自転車”伏兵が米上場〜日本進出のモバイク、ofoは消える浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2021年05月13日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

海外進出のofo、モバイク横目に地方展開

 中規模企業が次々に破たんし、ofoとモバイクが死闘を繰り広げていた17年当時、ハローバイクの影は薄かった。

 ofoとモバイクは海外に打って出たことで日本のIT業界でも脚光を浴び、メルカリなどが類似サービスを始めるなどちょっとしたブームになったが、今から振り返ると業界全体が酔っぱらっていた状態だった。

 一方、杭州市で創業した後発のハローバイクは、一気に規模拡張できる体力がなく、競合の少ない地方都市にサービスエリアを広げていた。18年に入りofoやモバイクが資金難に直面するのとは対照的に、堅実な運営を続けていたハローバイクは、アリババの金融子会社アント・グループから複数回にわたって資金を調達し、アリババグループの強力な後ろ盾を得ることとなった。

 そして同年3月、同社はアントの信用スコア「セサミ・クレジット(芝麻)」の点数が650以上のユーザーを対象にデポジット(保証金)を免除すると発表した。

 中国は物を借りたりサービスを利用するのに、比較的高額のデポジットを払うカルチャーがある。ホテルでもチェックインの際に宿泊料以上のデポジットを要求されることが多い。

 シェア自転車もデポジット制度を導入していたが、運営企業の管理がずさんで、企業が経営破たんした際に返金されないことが社会問題化していた。

 セサミ・クレジットはAIで消費者の信用を算出し、スコアが高い人にはさまざまな優遇措置を提供してきた。ハローバイクはアント・グループの一員となることで、シェア自転車業界ではいち早くデポジット免除を実施し、他社のユーザーを奪い取ることに成功した。

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