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» 2021年06月21日 07時00分 公開

ジョブ型雇用のために、人事部門に求められる自己改革いまさら聞けないジョブ型雇用(7/7 ページ)

[柴田彰,ITmedia]
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 下記の図表をご覧ください。これは、グローバルな先進企業が創り上げ、日本企業も見習おうとしている人事機能の体制図です。この体制には、BPをはじめCoE(Center of Excellence)、EXP(Expert)の3つの機能が存在しています。これら3つの役割を簡単に言うと、CoEは人事全体の戦略機能、BPは先の通り各部門の人事パートナー、EXPは実務の運営機能となります。

photo 先進企業における人事部門の体制

 ここで特に注目したいのはCoEです。いくら各部門への分権化が進むとはいえ、一つの企業体であれば全社的に人事の戦略を構想する必要性が確実に残ります。例えば、経営者のサクセッション、従業員エンゲージメントの向上、全社の人材ポートフォリオ策定といったテーマは、BPではなくCoEが取り扱わなければいけないものです。

 多くの日本企業では、人事部門の戦略性不足が指摘されています。近年、日本でも経営者の人事に対する重要性認識が、かつてないほどに高まっています。その背景には、今の人材ではVUCAの時代に対応できないという、経営者の焦りがあるのだと思います。

 「経営戦略を起点に、全社的な人事戦略を構想してほしい。しかし、現状の人事部門にはその能力が欠けている」──こうした類の嘆きを呟く経営者に、何度もお会いしました。今まさに、経営者はCoE機能を欲しているのです。

 日本の人事部門に戦略性が不足しているのは、これまではそうした役割が求められてこなかったことが最たる原因です。「取りまとめと調整」の役割では、交渉の戦術は磨かれても、戦略的な思考を育むことはできません。従来の人事パーソンに求められてきた能力やスキルと、CoE機能で必要とされるものとは、かなり異なると考えて良いでしょう。

 一つ、象徴的な事例として、日本のあるメーカーの話をしたいと思います。そのメーカーでは、グローバル企業で人事を長年経験した欧米人のマネジャーを採用しました。そのマネジャーは、日本本社の人事部員と仕事をする中で、あることに気付いたそうです。

 EXP機能を担える部員は数多くいるものの、CoEとBP機能を担える部員はほとんどどいない。単に能力不足というだけではなく、CoEとBPを任せるには、部員のマインドにも大きな改革が必要だ──そう思ったそうです。この言葉には、決して無視できない大きな重みがあるように感じられてなりません。

 ジョブ型雇用をテーマとしたこの寄稿も、今回で終わりとなります。全6回を通じて、ジョブ型雇用の本質は、適所適材にあることをお伝えできていれば幸いです。

 日本企業には、これまでの成功体験で培った独自の雇用慣行があり、それはいまだに根強く存在しています。その独自の慣行が、今では日本企業の足かせとなりつつあるのです。

 この足かせを外し、ジョブ型雇用を組織に定着させていくには、経営陣をはじめ組織の構成員全体のマインド・チェンジが必須であることは論を待ちません。その変革を推し進めていく主体は人事部門であって、日本の人事パーソンの役割であり使命であると思います。

 現時点では、確かにCoEとBPの機能を十分に担える人事パーソンは多くはありません。しかし、この事実は人事パーソンにとってチャンスとも捉えられるはずです。新たな能力を獲得し、CoEやBPの任を果たせる人材になれれば、その人の価値は格段に高まり、人材市場では引く手数多になるはずです。希少性の高い人材こそ、人材市場での価値も高いものです。

 日本においてジョブ型雇用への転換は、そう簡単にはいかないかもしれませんが、昔に後戻りすることはないと予想されます。こうした大きな転換点に立ち会える機会は、そうめったにはありません。人事に携わる方は、そのことを胸に刻んで、新たなチャレンジに挑んでいただきたいと切に願います。

著者紹介:柴田 彰(しばた・あきら)

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コーン・フェリー・ジャパン株式会社 コンサルティング部門責任者 シニア・クライアント・パートナー

慶應義塾大学文学部卒 PwCコンサルティング(現IBM)、フライシュマンヒラードを経て現職。コーン・フェリー・ジャパンのコンサルティング部門責任者。

近年はジョブ型人事、社員エンゲージメント、経営者サクセッション、役員改革などのテーマを数多く取り扱う。

著書に「エンゲージメント経営」「人材トランスフォーメーション」、共著に「VUCA 変化の時代を生き抜く7つの条件」「職務基準の人事制度」「企業競争力を高めるこれからの人事の方向性」、寄稿に「広報会議」「企業会計」「労働新聞」ほか。

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