──コロナ禍によりデジタル化への取組みを加速するなかで、特に労力を要したことはありましたか。
前林氏:まずは機器などのインフラの整備ですね。従来から職員にはノートパソコンが配備されていましたが、かなり旧型のタイプでしたので、とにかく分厚くて重い。とても持ち出して使えるものではありませんでした。
また、公務という特殊性によって持ち出せない書類や電子データがあるなか、セキュリティを確保しながらテレワーク環境をどう実現していくかも重要な検討事項でした。
現在は持ち出しに適したサイズのノートパソコンを支給しており、シンクライアント化することで都庁の外でもセキュリティを確保しながらデータを処理できるようになっています。
──まずはデジタル化や業務改善の基礎となる、システム環境面の整備を行われたのですね。
前林氏:例えば、テレワークのための制度を人事部で一生懸命作ってくれたとしても、対応する機器や環境がなければ、その制度を活用できません。そのため、まずはインフラ機器を急いで整備し、テレワークできる環境を整えていきました。
──新たなパソコンの整備はどれくらいの規模で行われたのでしょうか。
前林氏:この1年で都庁職員へは、新たなパソコンが全て行き渡っており、テレワークも完全に実施できる環境となっています。
──それだけ大規模な端末の配備が実現できた一番の要因はどこにあったと思われますか。
前林氏:トップの意気込みだと思います。小池百合子知事や、都政の構造改革推進チームのリーダーである武市敬副知事、サブリーダーである宮坂学副知事が示す方針があったことで「シン・トセイ」が作られ、職員がその目標に向かって動いていたことが、こうした整備を実現できた要因だと思います。
──システム環境面が整備され、業務においては具体的にどのような変化が生じていますか。
小野氏:これまでは会議や打ち合わせの際に大量の資料を印刷、配布していましたが、いまは紙を配布するのではなくモニターに映すなど、ペーパーレスによる会議が多くみられるようになりました。
星埜氏:対外的なミーティングだけでなく、庁内の会議もオンラインで開催することが増えましたね。
小野氏:例えばWeb会議の開催案内が届けば、必要に駆られてやり方を覚えるようになります。声掛けだけではなく、働く環境を変えることで行動変容につなげていく。そうした点は、いままでの一般的な行政改革と異なるアプローチだと思います。
──テレワークの実施やデジタルの活用については、民間企業でも実現へ向けてどこから着手すべきか悩んでいるケースも多そうです。いまのお話からは、まずはやってみること、やる人を少しずつ増やしていくことが大事なように感じました。
小野氏:私もデジタルの分野は得意ではありませんが、頻繁に利用をしているうちにだんだん慣れてきます。利用することに慣れるとそれが普通になりますし、むしろそのほうが便利だと感じます。環境が整っているのであれば、まず使ってみることが大事だと思います。
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