おじいちゃんIT人材が爆誕!? AI分野で、どんな業務を任せているのかシニアの長所を生かす(3/3 ページ)

» 2021年08月13日 12時00分 公開
[酒井麻里子ITmedia]
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シルバー人材の働きっぷりが若者社員の刺激に

 実際にシルバー人材として働くスタッフからの反応も明るい。「仕事をしていると張り合いが出る」「リモートワーク勤務のペースがちょうどいい」「外で仕事をしていたときよりも穏やかな気持ちで業務に取り組める」といった声が挙がる。

 PC作業に関しても、「さまざまな操作を教えてもらい、PCが面白いと感じるようになった」「Excelやショートカットキーが使えるようになったことがうれしい」と話す人が多いそうで、「新たなことを積極的に吸収する姿勢で取り組んでいただけている」と榊原氏は笑顔を見せる。

 業務の中で生じた不明点などには、テレビ会議システムを通じて担当社員が随時対応しているが、意欲的かつ真面目に業務に取り組むシルバースタッフの姿は、指導に当たる若手社員にとってもよい刺激になっているという。

 今の若手がシニアになる頃には、今以上に年齢を重ねても働き続けることが当たり前になっているだろう。それに対してネガティブな印象を抱く人も少なくないかもしれない。年齢を重ねても働き続け、そこに生きがいを見いだす姿。そして、新しいことや知らないことを拒絶するのではなく、好奇心を持って意欲的に挑戦していく姿勢は、「自分も負けられない」という気持ちをかき立てると同時に、遠い未来のロールモデルにもなっているのかもしれない。

品質保証のためのテスト業務も準備中

 シルバー人材が担う業務の幅を広げるため、「QA業務」の開始に向けた準備も進める。これは、アプリケーションやWebサイトをリリース前に検証する品質保証のための作業のことを指す。具体的には、テストケースと呼ばれる作業手順マニュアルに従い、スマホを使った動作確認テストを実施する。問題があれば現地社員を通して東京側のエンジニアへ報告する方法を取り、安心して業務に取り組める体制を整えるという。

photo スマホを使った品質保証業務をシルバー人材が担う準備も進める(画像はイメージ、出所:ゲッティ イメージ)

 作業難易度はアノテーション業務より少し上がるものの、指導を担当する社員は、「今のスタッフの仕事ぶりを見ると、問題なく進められるだろう」と、シルバー人材の潜在能力の高さに太鼓判を押す。

「シルバー人材でもIT業務はできる」ことを広めたい

 これまでの経験から、シルバー人材が得意とする新たな分野も見えてきたという。

 「真面目さを生かせる業務として、企業に保管されている紙の印刷物をデジタル化(テキストデータ化)するOCR作業をシルバー人材が担うことも検討しています。シルバー人材の雇用が確保できるとともに、まだDXが進められていない企業側にもメリットがあります」(榊原氏)

 また、アノテーション業務についても、シルバー人材が経験値をより生かせる内容へと広げていくことを検討しているという。例えば、農作物の病害虫発生の診断に役立てるための虫の画像のアノテーション業務などは、「虫になじみの薄い若い世代より、シルバー世代の方が知識を生かせるはず」(榊原氏)と、期待を寄せる。

 「ITの業務は、どうしても“若い人しかできない”というイメージが先行しがちです。しかし、年齢を重ねた方でも取り組める、または年齢を重ねたからこそできるIT業務もあるということを、自社の取り組みを通じてもっと広めていきたいと思います。

 定年後であっても、意欲的に働きたいと考えている方は少なくありません。年齢に関係なく、スキルを磨いてどんどん自信をつけていけば、活躍していただくことは十分可能ですし、またそれによって企業も生産性を上げ、成長力につなげることができます。シルバー人材の方がイキイキと働ける場所をこれからも守りながら、教え、教えられ、互いに成長し合えるような関係を築いていきたいですね」(榊原氏)

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