AIが株の売り買いを提案 ここまで来た個人向けアルパカのAI投資(2/3 ページ)

» 2021年08月21日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

AIは高度なテクニカル分析——アルパカロボの仕組み

 アルパカロボの仕組みはこうだ。まず、東証上場銘柄のうち流動性が高い2000銘柄に対して、過去10年間の値動きデータと東証売買内訳データなどを用意する。東証売買内訳データとは、信用取引や空売りなどの細分化された情報だ。

 これらを機械学習(ディープラーニング)にかけることで、モデルを生成し、21日後のTOPIXに対する期待収益率を予測する。ディープラーニングの例として有名なのが、大量の猫の画像を学習させることで、次にある画像を見せたときにそれが猫かどうかを判別するというものだ。アルパカロボでは、大量の株価データを学習することで、株価の次の値動きを予測するというものになる。

過去の株式データから機械学習を行い、今後の値動きを予測する(アルパカ)

 「もともとは東証内訳データを使っていなかった。過去データ、ボラティリティ、時価総額情報などを入れて学習させていた。そのあと東証内訳データだけでやってみたが、やっぱり物足りない。両方を混ぜてみたら再現性があった」(四元氏)

 将来の株価を予測する手法は、過去の株価データを分析して予測するテクニカル分析と、企業の業績情報などを分析して予測するファンダメンタルズ分析に大きく分けられる。テクニカル分析は一般にはチャート分析とも呼ばれるが、アルパカロボは何が違うのだろうか?

 四元氏は、「AIは高度なテクニカル分析」だと話す。過去のデータを元にして未来を予測するのは同じだ。しかし、機械学習によって単なるチャートよりも多くの情報を使い、数多くの法則を導ける可能性がある。

アルパカの四元盛文社長

 「チャートは株価を人が分かりやすいように見せているだけ。見る側の知見に立って作っている。チャートからゴールデンクロスだとかで売りだ、買いだと意味付けている。AIを使った分析は、いろいろな法則の集合体であり、そこから得られる何かのパターンを、強気とか弱気という表現で出している」(四元氏)

 現在は21日後、つまり営業日換算で1カ月後の期待収益率を予測するモデルだ。3カ月予測、6カ月予測も行い、結果として1カ月が最も再現性が高かったという。期間が長くなるほど、四半期決算報告などのイベントが発生し、過去の時系列データ以外の要素が入ってくるためではないかと四元氏は見る。

 一方で、1カ月よりも短い期間の予測は手を付けなかった。「回転売買を誘発するプロダクトになってはいけない」(四元氏)という考えからだ。

 予測の的中精度は「63%くらい」だという。あまり高くないと考える人もいるかもしれないが、金融商品の予測において50%を上回る精度を継続的に出せるならば、ものすごい収益を上げられる可能性がある。

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