いかに病のある人をインクルージョンする組織にするのか カルビーの組織開発社員の病と人事(2/4 ページ)

» 2021年09月01日 07時00分 公開
[リクルートワークス研究所]

1人の“冷や冷や”を全員で共有し学びに変える

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 1つ目は、主治医、産業医からこの人はきちんと働ける、というお墨付きがあること。「調子が悪くても、働きたいばかりに『働けます』と言う人もいます。医療の専門家の診断・アドバイスは必須です」(武田氏)

 2つ目は、「本人のモチベーションが働ける状態になっており、同時に仕事に必要なスキルを発揮できる体調であるか」(武田氏)だ。気持ちがあっても体がついていかない、あるいはその逆、という状態では十分なスキル発揮は難しい。

 最後は周囲の協力を得られるかどうかだ。「何らかの制約のある人がチームに入れば、多少なりともその人への配慮が必要になり、上司や同僚がフォローアップできるかどうかが問われます。この3つをクリアするために、産業医、保健師、上司、人事が連携する体制を整備しています」(武田氏)

 この連携体制を機能させる施策の1つに、社内で人事領域に携わる人全てを対象としてオンライン上で定期的に開催される「人事塾」がある。「病気の社員の支援は、誰もが経験するわけではありません。不慣れな人事がいるのは当然のことです。病気に限らず、現場ではさまざまな“事件”が起こり、イレギュラー対応が求められます。その事例を全員で共有し、リスクマネジメントの観点からも全員で学ぶことを大事にしています」(武田氏)

 「人事塾」はワークショップ形式で、「あなただったらどうする?」という問いに全員が解を出そうとする。それに対して病がテーマであれば産業医や労務管理に詳しい弁護士など、専門家がアドバイスすることもある。「カルビーにおけるそのケースへの正しい姿勢を共有するのと同時に、誰かの“冷や冷や”した経験が全員のものとなり、全員の学びとなる。この蓄積によって、全員がスキルアップしていくことを目指しています」(武田氏)

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