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3年間で大改革の「タイガー」、きっかけは元ソニーの女性役員家電メーカー進化論(6/7 ページ)

» 2021年10月13日 07時00分 公開

海外市場とハイテク分野で、さらなる成長を目指す

 昭和の価値観が残る企業だったタイガーは、浅見氏の参画をきっかけに「令和」の時代に合ったマーケティング戦略やものづくりの指針を定め、未来へと大きく舵を切った。

 コロナ禍の影響でインバウンドニーズが下がったこともあり、昨年の売上高は、一昨年と比較して微減だが、国内市場に関しては100%を越えている。主力の炊飯器も好調で、新モデルで期間売り上げ1位を記録。今後、数量と金額の両方でナンバーワンを目指していく。

 さらに、注力しているのが海外市場と、ハイテク分野だ。

 「コロナ禍の影響で海外市場を伸ばせていない状態ですが、当たり前すぎる発言かもしれませんが、タイガーとしてはグローバルも目指そうとしています。できれば100周年までに海外の売上比率をもっと高くしたいですね。あまり具体的にはお話できませんが、グローバルで売れるものを作っていくという方向性です」(浅見氏)

 一方のハイテク分野で、社会的な注目を集めているのが、タイガーの持つ熱制御技術を転用した、住宅用真空断熱パネルと宇宙開発で使われる真空二重機構断熱・保温輸送容器だ。

 タイガーの開発した住宅用真空断熱パネルは、厚さわずか13ミリメートル。グラスウールでの断熱の20センチメートルに相当する性能が出る画期的なものだ。現在、実証実験が終わった段階で、次世代の住宅建材として建築業界での展開を検討している。

 また真空二重機構断熱・保温輸送容器は、国際宇宙ステーション(ISS)実験試料を地球へと回収する目的でJAXA、テクノソルバとともに開発したものだ。「4℃±2℃で4日間以上の断熱性能を保持し、さらに最大40Gの着水衝撃に耐える強度」という条件をクリアし、18年11月に、宇宙実験サンプルを日本に持ち帰ることに成功した。さらに21年6月に第2弾が、SpaceXの宇宙船「ドラゴン22号機」で宇宙に打ち上げられ、こちらも無事に実験サンプルの持ち帰りに成功している。

21年6月に打ち上げられた「ドラゴン22号機」に搭載された真空二重機構断熱・保温輸送容器と同一のもの。大幅な軽量化、サイズダウンを実現している

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