ここしばらく、エネルギー系の取材が激増中である。いうまでもないが、国内でも国外でもプロパガンダ塗れの情報が乱れ飛び、そういう状況を何とかしたいと考える各企業が、必死に説明会を開くという流れが続いているからだ。
このへんは、言葉の定義が難しい。そのようにして発信される情報にはいろんなパターンがある。例えば、もう明らかな意図を持って話を都合の良い方向へ持っていこうとするもの。場合によってはウソや、都合の悪いデータを黙殺する。まあこれは純然たるプロパガンダだ。
これと近いけれど本質的部分が違うのは、ポジショントーク。「いやこういう角度から見ればこうでしょ?」とか、「そこはまだ確定してないでしょ? まだまだ諸説あるよ」という話がしたいか、あるいは「自説の正しさ」を心から信じて主張している場合もある。ただし、自覚的であるか否かは別として、バイアスが掛かっている。
もちろん、極力バイアスを排除してバランス良く主張しようとするものもある。これには適切な名前がない。暫定的に「フラット派」としておこう。ポジショントークとの差は「フラットであろうとする意思」を内包しているかどうかだと思う。ややこしいのは最後の最後で好き嫌いや、個人としての思想信条の影響を完全に排除することは難しいことだ。人間である以上、パーフェクトなフラットさは求められない。
これに加えて、そうやって発信された一時情報が伝え手、つまりメディアのプロパガンダ的姿勢やポジショントーク的姿勢、あるいはフラット派の姿勢で微妙に改変され、パターンのマトリックスができ上がってしまう。
という中で、まあ筆者本人としては可能な限りフラットであろうとしているつもりだが、努力はすれども「我が意見は完全にフラットである」と言い切れるほどには己を過信してはいない。
川崎重工による水素運搬船のイメージ。4万キロリットルタンクを4基搭載する300メートル級の運搬船の技術開発を進めている(リリース)
- やり直しの「MIRAI」(後編)
新型MIRAIは、魔法の絨毯のような極上の乗り心地と、重量級GTとして破格の運動性能を両立している。しかしインフラとの兼ね合いなしにFCVの普及はあり得ない。後編ではそのインフラの今と未来をエネルギー政策全般を通してチェックしてみたい。
- EVの行く手に待ち受ける試練(前編)
電動化を進めようとすると、極めて高いハードルとしてそびえ立つのがバッテリーの調達である。バッテリーの調達に関しては、大きく分けて問題が2つある。ひとつはバッテリー生産のひっ迫、もうひとつはバッテリー原材料となる鉱物、とくにレアメタルの絶対的不足である。
- バッテリーEV以外の選択肢
バッテリーEV(BEV)やプラグインハイブリッド(PHV)などの「リチャージ系」は、自宅に充電設備がないともの凄く使いにくい。だから内燃機関はしぶとく残るし、ハイブリッド(HV)も然りだ。ただし、カーボンニュートラルにも目を配る必要はある。だから、それらを補う別のエネルギーを開発しようという機運はずっと前から盛り上がっている。
- MIRAI 可能な限り素晴らしい
すでに富士スピードウェイのショートコースで試乗を試しているトヨタの新型MIRAIを借り出して、2日間のテストドライブに出かけた。
- ガソリン車禁止の真実(ファクト編)
年末の慌ただしい時期に、自動車業界を震撼(しんかん)させたのがこのガソリン車禁止のニュースだった。10月26日の菅義偉首相の所信表明演説と、12月11日の小泉進次郎環境大臣会見が基本になるだろう。カンタンにするために、所信表明演説を超訳する。
- 船からトラックまで 水素ラッシュを進めるトヨタ
トヨタの水素戦略の中で、全ての中心にあるのは、MIRAIに搭載される燃料電池スタックだ。MIRAIはいわずと知れた燃料電池車(FCV)で、水素と酸素を反応させて発電するFCスタックを備えている。クルマ以外の燃料電池需要に対して、MIRAIのFCスタックの持つポテンシャルは大きい。
- 水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
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